「原発事故による放射線被ばく線量は一般的に低い」 専門家指摘 福島市で国際シンポ
講演を踏まえ議論する国内外の有識者
2022/03/06 09:18
東京電力福島第一原発事故に伴う県民健康調査に関する国際シンポジウムが5日、福島市の福島医大福島駅前キャンパスを会場にオンラインで催された。国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)のギリアン・ハース氏は、委員会の最新の報告書に関して講演した。福島第一原発事故による放射線被ばく線量は一般的に低いと指摘し、事故発生後に診断された甲状腺がんについて「多くは超高感度の検査に起因し、放射線被ばくが原因ではない」と述べた。
福島医大放射線医学県民健康管理センターの主催。福島医大の志村浩己臨床検査医学講座主任教授は、2017(平成29)年度以前に行われた1~3巡目の甲状腺検査の解析結果を報告した。推定被ばく線量が高まるほどにがん発見率が上昇するという傾向は確認できないとし、「現時点で、甲状腺がんの発症に放射線の影響は認められていない」と語った。
災害後の心や体のケアについて議論した。精神医学を専門とする米国の医科大のクレイグ・L・カッツ教授は災害による心理的影響は多岐にわたるとし、回復を促す対策が重要だとした。元葛尾村副村長の馬場弘至県保健福祉部主幹らも登壇した。
シンポジウムは4回目。今回は「サイエンスで支える福島のWell―being(心身の幸福)」をテーマにオンラインで配信し、約120人が視聴した。
冒頭、福島医大の竹之下誠一理事長兼学長と井出孝利副知事があいさつし、県民健康管理センターの神谷研二センター長が講演した。福島医大の大戸斉総括副学長、安村誠司理事兼副学長、石川徹夫放射線物理化学講座教授、坪倉正治放射線健康管理学講座主任教授、田巻倫明健康リスクコミュニケーション学講座主任教授が座長を務めた。