被災地と大学、行政を橋渡し 地域再生へ二人三脚 夫婦で移住、復興支援【あすを見つめて】

 

活動の打ち合わせをする滉央さん(右)と真優さん

 

2022/03/06 15:14

 

■ 長田滉央さん 真優さん ともに福島大特任専門員、楢葉町

 長田滉央さん(29)、真優さん(29)夫婦は昨年五月に東京都内の建築設計事務所を退職し、真優さんの古里である楢葉町に移り住んだ。福島大うつくしまふくしま未来支援センターの特任専門員として大学、行政、地域の橋渡し役を担う。「少しでも暮らしやすい地域になるよう、自分の経験を生かす」。復興支援の活動に夫婦二人の思いを込める。

 東日本大震災の時、真優さんは磐城高三年生。大学受験のため前橋市にいた。翌日の試験が中止になり、自宅に帰ろうとしたが、東京電力福島第一原発事故が発生した。一度も帰れぬまま、大学生活が始まった。三カ月後の六月に一時帰宅で古里に戻った。震災で自宅は半壊し、青々とした稲が茂っているはずの水田は手付かずのまま荒れ果てていた。「つらい思い出だったのか、当時の記憶はほとんどない」

 大学、大学院では建築学を専攻。復興に役立ちたいと、とりわけ建物の耐震性に関する知識を深めた。卒業後は首都圏の超高層ビルなどの構造設計を手掛けた。「自分は誰のために働いているのだろう」。忙しさに追われる中、自らの仕事に疑問を抱き始めた。

 二〇二〇(令和二)年二月、同じ会社で都市開発を担う滉央さんと結婚。仙台市出身の滉央さんも、震災当時何もできなかったもどかしさを感じていた。「今、東北に飛び込まなければ後悔する」。二人で話し合い、移住を決めた。

 滉央さんは浪江町、真優さんは富岡町の事務所でそれぞれ働き、各市町村の職員をつなぐ意見交換会や、被災地を伝える写真展を開いてきた。滉央さんは活動に手応えを感じ、さらに多くの人が地域再生に関わることができる仕組みづくりに意欲を燃やす。

 真優さんは一級建築士の資格を生かし、復興を担う同世代の仲間を手助けする構想を抱く。「復興という枠にとらわれることなく、自分が地域のためにできることに一つ一つ取り組んでいきたい」と思いを強めている。

 

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