水素と観光組み合わせ、被災地盛り上げ 「水素ツーリズム」今秋にも開始 福島県浪江町

 

2022/05/24 09:55

 

 政府が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を掲げる中、水素と観光を組み合わせた「水素ツーリズム」が今秋にも、福島県浪江町を中心に始まる。水素製造実証拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」や、水素を活用している施設を巡り、新時代のエネルギーに理解を深める。関係者は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被災地の観光振興につながると期待している。

 福島県内の魅力を発信するため畑で栽培している野菜を収穫し、その場で料理を楽しむ体験型ツアー「フードキャンプ」を展開している孫の手トラベル(本社・福島県郡山市)が、観光資源として水素に着目した。浪江町と企業が各施設で進めている水素を使った実証事業について、町の担当職員らが説明役を担う。

 ツアー参加者はFH2Rで水素について学び、福島ロボットテストフィールド浪江滑走路などで水素自動車に乗車体験し、請戸漁港で水揚げされた魚介類の料理を楽しむ企画を検討している。復興を肌で感じながら、水素の知識を深めるプログラムを練っている。

 FH2Rで製造された水素を活用し、照明や冷暖房の一部を動かしている道の駅なみえや、人工知能(AI)で水素を効率的に運用する実証事業を進めている福島いこいの村なみえなどでは、水素の可能性に触れる。

 孫の手トラベルの山口松之進社長は「持続可能な社会を実現するために、水素が鍵を握る。水素に関して本県は先進地であり、旅を入り口に、身近に感じてもらえるような工夫をしていく」とツアーの意義を強調する。

 福島県観光物産交流協会は震災の被災状況や復興の歩みを知ってもらう「ホープツーリズム」を展開している。中島徹一郎観光部長は「県内外の人に福島の今を知ってもらう機会が広がる。ぜひ応援していきたい」と新たな企画を歓迎している。

 浪江町産業振興課の清水中課長は「水素は生活のあらゆる場面で使われている。観光と水素を組み合わせた取り組みで、水素の可能性を知ってもらいたい」と話し、水素ツーリズムを通した町の魅力発信に期待を寄せた。

■「ナミエナジー」24日開所

 アポログループ(本社・福島市)のふくしまハイドロサプライが整備した移動式水素ステーション「ナミエナジー」は24日、浪江町の棚塩産業団地に開所する。「水素タウン構想」を進める浪江町を中心に、燃料電池車(FCV)の普及促進が期待される。

 福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)の西側に設置された。敷地面積は約750平方メートルで、FH2Rで製造された再生可能エネルギー由来の水素を活用する。

 専用トラックのタンクに水素を貯蔵し、FCV3台分を満タンにできる量を供給する。2023(令和5)年以降、浪江町を拠点に、東京電力福島第一原発事故で被災した12市町村に営業拡大を検討している。

 浪江町ではナミエナジーの他、クレーンリース業の伊達重機(本社・浪江町)と日本水素ステーションネットワーク合同会社(本社・東京都)が定置式水素ステーションを整備する計画を進めており、12月の開所を目指している。

 

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