野馬追 万感の晴れ姿

 

親子3人で初めて出陣した杉本隆雄さん(中央)。左が葵生さん、右が瑞生さん

 

2022/07/24 10:35

 

北郷陣屋で武者を前に訓示する多田さん(中央)

 

 23日、3年ぶりに“完全復活”を果たした相馬野馬追には相双地方の各郷の騎馬武者がさまざまな思いを胸に出陣した。小高郷(南相馬市小高区)からは、東京電力福島第一原発事故で移住を余儀なくされた武者が12年ぶりに古里で勇姿を見せた。初陣の若き総大将を支える北郷(同市鹿島区)の副大将は、長年務めた兄の思いを受け継ぎ大役を担った。メイン会場の中ノ郷(同市原町区)では、夏の風物詩を心待ちにしていた観衆が「ウィズ・コロナ」時代の大規模イベントを見守った。

 

■12年ぶり古里凱旋 原発事故で避難 親子3人で出陣

 古里に12年ぶりに野馬追を愛する親子3代の姿がそろった。小高郷の杉本隆雄さん(57)は東日本大震災と原発事故発生後初めて古里に凱旋(がいせん)した。長男葵生(あおい)さん(25)、次男瑞生(みずき)さん(23)と初の親子3人での出陣を果たした。小高区の沿道では隆雄さんの両親が見守った。「子どもたちに伝統を伝えられた」とたくましく成長した馬上の息子たちを見つめた。

 隆雄さんは祖父の代から出陣している野馬追一家に育った。高校3年生で初陣し、10回以上の出陣を数える。ただ、原発事故の影響で約6年前から神奈川県で暮らす。遠方から参戦する負担などを踏まえ、出陣を見送っていた。

 ただ、小高郷騎馬会長を務めた父義隆さん(83)、母ミツイさん(79)の一言が胸に刺さった。「野馬追に出る姿が見たい」。小高で暮らす両親に再び晴れ姿を披露したい思いを抱き続けた。同時に騎馬武者が減少傾向にある現状も知った。

 「脈々と続いてきた伝統を絶やしたくない」。若い世代に野馬追の魅力を伝えようと今年、親子3人で古里を練り歩いた。満面の笑みを浮かべる両親が馬上から目に入った。後ろを振り返れば、息子たち2人は充実した表情を見せている。24日の神旗争奪戦にも3人で臨む。「息子たちには歴史ある野馬追の重みをさらに感じ、これからも出続けてほしい」と強く願っている。

 

■兄に代わり初の副大将

 「北郷武者の覇気を示す」。副大将を初めて務めた北郷の多田宏政さん(62)は、北郷陣屋に集結した武者を前に力強く訓示した。士気は一気に高まり、前日に元服式を行った十四歳の総大将・相馬言胤(としたね)さんを迎えた。

 多田さんは明治時代に野馬追の振興に功績があった海老原氏の子孫。副大将は昨年まで二十一年連続で兄の海老原永明さん(66)が担ってきたが、体調不良で欠場となったため多田さんが初の大役に臨んだ。

 「代々、務めを果たしてきた家系。最後までしっかりと総大将をお支えしたい」。家門の誉れと誇りを胸に、前を見据えた。

 

■観客の子どもら「いつかは出場」 雲雀ケ原祭場地

 南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地に戻ってきた騎馬武者たちの姿に、住民や観光客らは歓喜した。子どもたちは迫力ある光景を前に「いつか出場したい」と目を輝かせた。

 二十三日は陣羽織姿の武者が馬にまたがり疾走する「宵乗り競馬」が行われた。密回避や熱中症予防の水分補給を促すアナウンスが響く中、レースが繰り広げられた。マスク姿の観客たちが拍手で出場者を応援していた。

 四歳の頃にも訪れたことがあるという市内原町区の三品孝介君(10)=原町三小五年=は「勢いがあってかっこいい」と武者の勇ましさに見入った。

 祭場地近くに住む会社員吉田裕子さん(63)は「さみしいと感じていたのでうれしい。二十四日のお行列が楽しみだ」と語った。

 

■24日本祭り 動画ライブ配信

 相馬野馬追は二十四日、本祭りを迎え、南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地で勇壮な神旗争奪戦や甲冑(かっちゅう)競馬を繰り広げる。

 大熊町内では標葉郷から出陣した騎馬武者が十二年ぶりに凱旋行列に繰り出す。

 最終日の二十五日は南相馬市小高区の相馬小高神社で野馬懸の神事を行う。

 南相馬観光協会は動画投稿サイトでライブ配信する。

 

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