復興の波作れ 夢へこぎ出す 福島県富岡町の白土栄一さんが自宅跡に「SUP」拠点 8月下旬 子ども対象に教室

 

富岡ベースでSUPの体験教室について話し合う白土さん(中央)ら

 

2022/08/01 10:20

 

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により福島県富岡町から仙台市に避難している白土栄一さん(73)は8月下旬、古里で再出発する。自宅のあった場所にマリンスポーツの活動拠点を構えた。富岡町でボードの上に立ってパドルでこぐ「SUP(スタンドアップパドルボード)」の教室を開き、子どもたちへの普及を目指す。長年親しんできた海を舞台に町の復興に向け新たな挑戦を始める。

 

 富岡町の中心部から北西に位置する町内上手岡に、ひときわ目立つ建物がある。白土さんが自宅跡地に構えた「S..Tomioka base(富岡ベース)」だ。代表を務めるSUPクラブの会員用ゲストハウスとして活用する。「ここを拠点に、子どもたちにSUPを教えていきたい」と夢を抱く。

 1960年代後半、国内サーフィンの草創期に波乗りを始めた。富岡町内にサーフボード製造会社を創業。ショッピングセンターの運営も手がけてきた。

 2008(平成20)年夏、弟分だった南相馬市原町区の男性が、サーフィン中の事故で亡くなった。男性が生前、「自分が先に亡くなったら、サーフィンの聖地ハワイのマカハに散骨してほしい」と話していた。願いを果たすために訪れたハワイで、子どもからお年寄りまでSUPを楽しんでいるのを知った。導かれるように「日本に広めよう」と決意した。

 震災と原発事故で自宅を追われ、妻博子さん(57)の出身地である仙台市に避難した。愛した海に友人と古里を奪われ失意に暮れたが、「東北をSUPで元気にしたい」と2013年に東北初のSUP競技大会を開催した。2015年には宮城、福島両県のSUP愛好家を中心にNSSC(ノースショアサップクラブ)を創設した。

 2020(令和2)年9月、名取市閖上地区にクラブハウス兼初心者と一般ユーザー対象のSUPスクールを開業。現在、会員は東北から沖縄まで50人を超えるまでに成長した。

 そして今、富岡ベースで本格的な活動を始める。第1弾として、富岡町の海岸で8月30日にも子どもを対象にしたSUP体験教室を開く。「この地から新たな復興の一歩を踏み出す。それが古里への恩返しになる」。瞳を輝かせ、前を見つめる。

 

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