浜通りに産業都市形成 福島国際研究教育機構 浪江に本拠地、福島県提案

 

2022/08/31 09:34

 

 政府が浜通りに整備する福島国際研究教育機構の立地選定で、福島県は30日、最有力候補となっていた浪江町のJR浪江駅西側(川添地区)を機構の本拠地に決め、政府に提案した。機構を拠点として浜通り地域全体で産業都市の形成を目指し、世界レベルの研究開発や社会実装、産業化、人材育成を進める。政府は県の提案を踏まえ、9月中旬に開催予定の復興推進会議までに正式決定する方針。

 県庁で開いた新生ふくしま復興推進本部会議と福島イノベーション・コースト構想推進本部会議の合同会議で、立地を選定した。本施設の候補地は浪江駅西側にある川添地区の約10ヘクタール(東京ドーム約2個分)。交通アクセスが良好で周辺に住宅や商業施設もあり、生活環境が整っている点などが評価された。本施設が整備されるまでの仮事務所候補物件は、権現堂地区の「ふれあいセンターなみえ」を選んだ。

 会議で内堀雅雄知事は「自治体の枠を超えた人の流れの創出や広域的なまちづくりで浜通り、県内全域に効果を波及させていくことが極めて重要」と強調。国などと連携して機構を核とした広域的なネットワーク形成に意欲を示した。

 機構が掲げる「創造的復興」の実現には、機構のみならず、県内各地にあるさまざまな分野の研究開発・教育機関との連携が必要になる。原発事故後、浜通りには福島水素エネルギー研究フィールド(浪江)や福島ロボットテストフィールド(南相馬、浪江)、楢葉遠隔技術開発センター(楢葉)、浜地域農業再生研究センター(南相馬)など最先端の研究施設が整備された。県内には福島高専や福島大、福島医大、会津大などの教育機関もある。産業界も含め幅広く広域的に連携することで、県全域に相乗効果を波及させたい考えだ。

 立地選定を巡って県は、東京電力福島第1原発事故で避難区域が設定されるなどした12市町村を対象とした。このうち田村、南相馬、川俣、広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江の9市町から15カ所の提案があった。県は現地調査を進め、自然災害リスクや交通の利便性、研究開発分野の連携など11項目について2段階で評価した。

 機構は、浜通りに新産業を集積する国家プロジェクト「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の司令塔となる。主な研究分野は(1)ロボット(2)農林水産業(3)エネルギー(カーボンニュートラル)(4)放射線科学・創薬医療(5)原子力災害に関するデータや知見の集積・発信で、約50の研究グループに国内外から数百人の研究者が参加する。研究者の家族や関係職員、関連企業従業員らが定住するため、原発事故で避難を余儀なくされた地域の人口増加につながると期待されている。

 政府方針では2023(令和5)年度までに施設基本計画をまとめ、完成した施設から順次、運用を開始する。2030年度までに全ての施設を完成させるとしている。まずは来年4月に職員数十人規模の仮事務所を開設する予定。

   ◇  ◇   

 秋葉賢也復興相は30日、官邸で岸田文雄首相に県の立地選定結果を報告した。秋葉氏は記者団に対し「首相から候補地を現地視察し、提案内容を確認するよう指示された。丁寧に対応したい」と述べた。

 

関連記事

ページ上部へ戻る