留学体験を地方の中高生に伝えたい 福島県浪江町の野地雄太さん 体験型グローバル教育機関を立ち上げ

 

留学体験プログラムで留学生と会話する野地さん(右)

 

2022/09/05 09:20

 

 福島県浪江町の野地雄太さん(26)は今年2月、体験型グローバル教育機関「Beyond Lab」を立ち上げた。同町を拠点に、自身の留学体験を地方の中高生に伝える活動を展開している。

 「東京電力福島第一原発事故からの復興途上にある浪江町で、型にはまらず柔軟な思考を持った人材を育成する」と信念を語る。原発事故によるコミュニティの分断を乗り越えようとしている地域で、異なる価値観を持った他人を理解し歩み寄る姿勢を広めようと活動している。

 野地代表は福島高卒業後、米国のミネソタ大に留学。在学中には、米国や英国の大学生とともに宮城県や滋賀県でサマースクールを運営した。大学在学中の2016(平成28)年に行われた米国大統領選挙の際、人々が異なる信条や考え方を否定し遠ざけ、社会の分断や対立が生まれる状況を目の当たりにした。これを機に、子どものころから多様な価値観に触れる重要性を感じた。

 事業を通じて、子どもたちが世界から集まった留学生と交流し、異文化への理解やコミュニケーションの手段としての英語を身につけられる機会を提供する。今年4月に1回目の事業として留学体験プログラム「Beyond Camp in NAMIE」を浪江町で開いた。同様のイベントを8月、飯舘村でも催した。

 野地代表は最初はなかなか話し出せなかった中高生がプログラムを通じて自ら英語で意見を伝えられるようになる姿を見るとうれしくなるという。「異なる文化や言語を理解し、違いを楽しめる子どもが増えると、より創造的で寛容な社会になるのではないか」と子どもたちの姿に将来を感じている。

 

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