地球に優しいプラ原料へ“変身” 大量生産コスト減 廃棄野菜や植物 福島県南相馬市の「トレ食」

 

2022/10/18 09:50

 

廃棄された野菜から抽出したセルロース

 

 廃棄される野菜や植物から、環境に優しいプラスチックの原料として期待されるセルロースを取り出す新事業が福島県南相馬市で本格的に始まった。同市の「トレ食」が効率的にセルロースを抽出する技術を確立。連続運転可能な大型機械で製造した安価なセルロースを、プラスチック加工業者などに提供する。廃棄物の有効利用とともに、二酸化炭素削減につながる取り組みとして注目を集めている。

 

 セルロースをプラスチックの原料として活用すると、含まれる石油系素材の量を減らすとともに、強度を増す効果を得ることができる。トレ食は当初、廃棄植物からビタミンやタンパク質を取り出し商品化することを目指していたが、研究の過程で、植物に水や圧力、熱を加える加水分解によりセルロースが抽出しやすくなる点に注目。酵素を活用した成分分解により、効率良く抽出できる独自の技術を確立した。

 原料は、浜通りの農家や県内外のJAなどから出るトマトやブロッコリーの茎や葉、キャベツの芯、もみ殻、コーヒーかすを活用する。同社は市内の工場に特許出願中の機械を設置。1台で1日当たり最大1トンの植物を処理できる体制を整え、近く稼働させる。

 これまで工業用のセルロースは薬品などを使って木材チップから取り出す方法が一般的で、大量の抽出には多くの工程や時間が必要だった。効率的に大量の生産が可能になり、従来の5分の1から10分の1程度の価格でセルロースを提供できるようになるという。

 主な供給先として、いわき市でプラスチック素材加工を手がけるトラスト企画と連携。化学系専門商社の長瀬産業(本社・東京)が協力し、取引先の拡大を図る。ペットボトルや家電、自動車のバンパーなどへの活用を目指す。すでに国内外からの多くの問い合わせがあるという。

 長野県出身の沖村智社長(45)は都内の広告会社を辞め、2018(平成30)年に南相馬市にトレ食を設立した。研究が事業としてスタートするのを前に「セルロースは今後、さまざまな分野での活用が見込まれる。廃棄される野菜をなくし、脱炭素社会に貢献する取り組みを南相馬から世界に発信し、復興を応援していきたい」と意気込んでいる。

※セルロース 植物の細胞壁を形成する炭水化物で、一般には食物繊維と認識されている。近年はプラスチック原料の代替品として世界的に注目を集め、最先端のバイオ素材の一つとされる。

 

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