海竜に託す思い ご当地スイーツ開発 福島県いわき市

 

海竜に地域再生の思いを託す高木さん

 

2023/02/16 09:35

 

 福島県いわき市の沿岸部にあるカフェに「海竜」が浮かぶ名物の飲み物がある。1968(昭和43)年に近くで化石が見つかった「フタバスズキリュウ」をモチーフに店主の高木史織さん(35)が完成させた。かつて海を泳いだ雄大な姿に、東日本大震災で甚大な被害を受けた地域再生の思いを託す。

 ホテル高木屋内の「SLOW DAYS Cafe」の海竜ソーダは、海をイメージした青いシロップのソーダに寒天で作ったフタバスズキリュウや魚が浮かぶ。昨年末にはアイスや海竜クッキーをのせた「海竜ソーダスペシャル」も開発。高木さんは「海竜がまるで生きているように仕上げた」と胸を張る。

 久之浜町はいわき市北部に位置するのどかな漁師町で、高木さんの実家「高木屋旅館」も海沿いにあった。ただ、震災と東京電力福島第1原発事故で町は一変した。濁流が襲い、津波に伴う大規模火災で多くの建物が焼失した。火災の被害は免れたが、旅館や実家も全壊した。仕事のため自身は震災の3年後に東京都に移住したが、常に古里への思いを持ち続けていた。

 2016年、被災した商店街の再生事業に携わる父から「新しくできる復興商店街に空きがある」と相談を受けたのをきっかけに、2017年春に地元に戻りカフェをオープン。店の名物を考える中で思い浮かんだのは、幼い頃から身近にあった「海竜」だった。

 正式学名フタバサウルス・スズキイは約8500万年前に生息したとされ、同市大久町で化石が見つかった。高木さんの子どもの頃は夏に「海竜七夕祭り」が開催され、老舗和菓子屋はココアクッキーの中に海竜の柄が現れる「海竜クッキー」を販売していた。津波でレシピなどが流され、製造中止になったと聞いたが、記憶をたどると久之浜といえば海竜だった。

 高木さんは「久之浜の誇りとしてアピールしたい。町に人が集まり、活気づけばうれしい」とほほえんだ。

 

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