復興拠点外の自宅跡、公園に提供 避難解除の福島県飯舘村長泥 杉下定男さん「避難解除拡大の後押しに」

 

公園となった自宅跡で解除区域の拡大を願う杉下さん(左)と妻徳子さん

 

2023/05/01 09:21

 

 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内7市町村の帰還困難区域のうち、1日に特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除される飯舘村長泥行政区では、拠点外も解除となる。空間放射線量の推移を確かめる拠点外の「長泥曲田公園」に、自宅敷地を提供した無職杉下定男さん(73)=福島市に避難=は「長泥の今を発信し、解除区域の拡大を後押しする場所になってほしい」と願う。

 緑に囲まれた自宅は、かつて母屋や牛舎、倉庫が立ち並んでいた。だが、避難の長期化で小動物に荒らされ2020(令和2)年夏に解体した。敷地は国の線量低減実証事業の一環でアスファルトなどが敷設され、周囲はフェンスで囲われている。当時の面影を残すのは、屋根を青ペンキで塗り直したサイロだけだ。

 杉下さんは村から打診のあった公園整備の案を苦渋の思いで受け入れた。妻徳子さん(70)と月10日ほど長泥に通い、草刈りや農機具の手入れなどに汗を流してきた。解除後、杉下さんは公園周辺に桜やサルスベリを植樹しようと考えている。花木が育ち、村内外の人々が集う―。にぎわいが戻った古里の姿を思い浮かべる。

 公園への立ち入りは自由になるが、目の前にある杉下さんの畑を含め拠点外の他地域の解除の見通しは立っていない。「あと何年待てば良いのか」。自身の年齢を鑑み、生きがいだった農業を再び始める自信はない。「解除は前進だが、時間がかかりすぎた。政府は一刻も早く、帰還困難区域全域の解除の具体的な道筋を示すべきだ」と訴える。

 

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