大堀相馬焼の産地再生へ 拠点施設「陶芸の杜おおぼり」12年ぶり再開 福島県浪江町 2023/06/04 09:50

 

再開した陶芸の杜おおぼり内を見学する関係者

 

2023/06/04 09:50

 

大堀相馬焼の器を買い求める来場者

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で休止していた福島県浪江町大堀地区の大堀相馬焼の拠点施設「陶芸の杜おおぼり」は3日、約12年ぶりに再開した。現地で記念式典が行われ、関係者が大堀相馬焼の産地再生に向け、伝統の火を後世につないでいく決意を新たにした。

 施設は2002(平成14)年開館。登り窯や作品展示室、製土工場などを備える。外壁には大堀相馬焼の特徴である「走り駒」の壁画が描かれている。震災と原発事故発生前は大堀相馬焼協同組合が事務所を置き、作品を展示・販売していた。震災などで設備が損傷したため、町が改修工事を実施。特定復興再生拠点区域(復興拠点)に含まれ、3月31日に避難指示が解除された。

 式では吉田栄光町長が「伝統を守り続けてきた窯元の皆さまに感謝を申し上げる。大堀相馬焼の産地再生や町全域の復興に向けて取り組みを進める」とあいさつした。竹谷とし子復興副大臣、鈴木正晃副知事、平本佳司町議会議長らが祝辞を述べた。大堀相馬焼協同組合の半谷貞辰理事長が「施設が再開できて感無量。先人から受け継いだ伝統を何としても引き継いでいく」と誓った。関係者がテープカットし、再開を祝った後、施設を内覧した。

 施設の開館日は毎週金、土、日、月曜日と祝日。開館時間は午前10時から午後3時まで。当面は作品を展示する場とし、将来的に町は作品販売や陶芸教室の実施を検討している。秋には恒例行事の「登り窯まつり」の開催を予定している。

 大堀相馬焼は300年以上の歴史があるとされる国指定の伝統的工芸品。震災と原発事故発生前まで、大堀地区には20軒超の窯元が居を構えていたが、いずれも町外に避難し、約半数は休止や廃業を余儀なくされた。一部の窯元は地区内に戻る意向を示している。

 

■4日まで「大せとまつり」

 陶芸の杜おおぼりの再開に合わせ、大堀相馬焼協同組合は3、4の両日、施設内で「大せとまつり」を催している。同施設での開催は約13年ぶり。初日から大勢の来場者が集まり、大堀相馬焼の作品を買い求めた。

 組合に加盟する7窯元が焼き物を展示・販売している。なみえ焼そばなど町の特産品も並ぶ。トヨタの水素燃料電池車「MIRAI」を使った電動ろくろの実演も繰り広げている。

 会場に足を運んだ主婦半谷美和子さん(49)は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生前まで浪江町に居住し例年、まつりを訪れていた。避難先の福島市から駆け付け、「懐かしい気持ちになった。地域が盛り上がってくれてうれしい」と笑顔を見せた。

 入場無料。最終日は午前10時から午後3時まで。

 

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