残り糸で“葛尾良品” 福島県葛尾村に工場 愛知の金泉ニット 衣類、小物お得に デザインに地域色 魅力発信

 

「葛尾企画」として製造した商品を紹介する加藤さん

 

 福島県葛尾村に工場を置くニット製品製造・販売の金泉(きんせん)ニット(本社・愛知県岡崎市)は「葛尾企画」と銘打ち、製造過程で出る残糸を用いた衣類や小物の品ぞろえを充実させている。「KATSURAO」のロゴや青空、高原、羊など葛尾を象徴するデザインを取り入れた良質な製品を原価で販売。村への誘客や魅力発信に一役買っている。村制100周年の記念タオルも手がけた。関係者は「葛尾から付加価値の高い製品を生み出す」と意気込んでいる。

 葛尾企画は2年ほど前に始まった。現在はセーターやスカート、バッグ、帽子など年間約40種類を商品化している。百貨店などに並ぶ製品の製造過程で出たウールや綿などの素材を原料に使う。製造技術に加え、商品企画や販売知識を含めた従業員の「総合力」を引き上げる狙いもある。

 一連の商品は村復興交流館あぜりあの展示販売ブースで売っている他、道の駅なみえ(浪江町)で毎月開く販売会で扱っている。大量生産はできないものの、高価格帯の商品と同じ品質で独創性に富む品が手頃な値段で手に入るとあって次第にファンを獲得。仙台市や茨城県などにも得意客がいるという。

 記念タオルは村旗と同じえんじと白の2色の良質な綿糸で編み、滑らかな感触に仕上げた。村と包括連携協定を結ぶ郡山女子大の学生がデザインを担い、「100」の数字や村のマスコットキャラクター「しみちゃん」を描いた。村の全489世帯のうち村内に住む世帯には手渡しし、村外居住者には送る。村の100年を振り返る冊子も添える。

 金泉ニットは東京電力福島第1原発事故の発生後、村への初の誘致企業として2018(平成30)年6月、産業団地に福島工場を開いた。進出の背景には製品の洗浄に適した地下水という恵みや、太陽光発電を推進する村への共感がある。

 ニット製造では編み上げた製品を水で洗う。糸を緩ませ、柔らかさや光沢を増す作業だ。福島工場が引いている地下水は良質な軟水で、カルシウムやマグネシウムなどミネラル分が少なく柔らかさが増すという。

 操業に必要な電力の約4割は村内の地域電力会社の太陽光発電所で生まれた電気で賄っている。

 残糸を地域おこし団体が開く小物作り教室の材料に提供したり、村内事業所の交流会を開いたりと社業以外でも地域と積極的に関わっている。福島工場長の加藤克則さん(67)は「残糸やクリーンエネルギーの活用を自社の特徴とし、葛尾でしか作れない高付加価値の製品を生み出したい」と誓う。

 

関連記事

ページ上部へ戻る