浜通り豪雨1週間 ボランティア求める声 住民、復旧は長期戦 3連休に協力呼びかけ 福島県いわき市

 

被災した住宅を回り、住民から健康状態などを聞き取る保健師(左)=14日午後2時45分ごろ、いわき市内郷宮町

 

2023/09/15 09:25

 

 

 台風13号による8日夜の豪雨から15日で1週間となった。被害が集中したいわき市では住民の間に災害ボランティアを求める声が高まる一方、人手が需要に追い付いていない。市は16~18日の3連休を復旧の正念場とみて、県内外に支援を求める。14日は疲労が重なる住民の健康や衛生面をケアするため、保健師による巡回も本格化。生活再建への道のりが続いている。

 「16日からの3連休が(復旧作業)のヤマ場だが、圧倒的にボランティアが足りない」。14日午後、いわき市役所で報道陣の取材に応じた内田広之市長は厳しい表情で答えた。

 被災者からの派遣要請や協力者からの応募を受け付け、派遣先を調整する市災害ボランティアセンターには14日正午までに271件の派遣要請が寄せられた。ただ、同日午後3時時点で222件に対応できていない。全ての要請に応じるには延べ約1300人が必要と見積もるが、事前登録を済ませたボランティアのうち、3連休に活動できるのは247人にとどまるという。

 自宅が浸水したいわき市内郷内町の猪狩恭明さん(56)は「ボランティアを頼もうとしたが、電話がつながらなかった」と諦めたようにつぶやいた。平屋が床上1メートル50センチほど水に漬かり、家具や家電はほぼ処分するという。「自分たちで少しでもやった方が早い」と黙々と手を動かしていた。

 市内の浸水被害件数は膨らみ続けている。14日の市のまとめでは1701棟に達し、前日から約310棟増えた。同市内郷白水町に妻と暮らす60代男性方には片付け途中の家財道具が積まれたまま。男性もボランティアを要請したが、支援の手は来ないという。「なんとか自分たちで頑張りたいが、体力は限界に近い」と疲労感を漂わせた。

 市は16~18日をボランティア活動集中期間として協力を呼びかけている。参加者は専用フォーム=QRコード=で事前登録する。支援に向かう際には「災害ボランティア車両 高速道路通行証明書発行サイト」で証明書を取得すれば、高速道路の無料措置も受けられる。市災害ボランティアセンターの担当者は「生活再建には早期の片付けが欠かせない」と訴えている。

■保健師巡回、心身ケア

 浸水被害が集中しているいわき市内郷地区などでは14日、市の保健師ら13チームが活動した。「おなかを壊していませんか。熱はないですか」。2人一組で一軒一軒を巡り、住民の健康状態を聞き取った。

 自宅が浸水し、2階で寝起きしている内郷宮町の後藤末子さん(76)は午後9時に布団に入るが、寝付けない夜が続くという。「片付けが終わらず、この先どうなるかを考えると眠れない」。車も水没し、満足に入浴もできない窮状を保健師に訴えた。

 市は派遣する保健師を増やし、見回りを強化する。泥が乾いて舞う粉じんや暑さへの注意も呼びかける。連休中も活動し、来週中に全ての被災地域を巡る予定だ。

内郷地区を歩いた保健師の女性(45)によると、被災から1週間後は張り詰めていた緊張が切れる時期に当たり、心身に不調が現れることもあるという。「体調に不安を感じたり、周囲に普段と様子が違う人に気付いたりしたら現地支援センターや市に相談してほしい」と呼びかけている。

■休校の宮小復旧に1カ月以上の見通し 19日に他校で再開

 いわき市は14日、浸水や停電で休校中の宮小(いわき市内郷宮町)は復旧までに1カ月以上かかるとの見通しを発表した。児童58人は19日から当面の間、最寄りの内郷二中の教室を間借りして授業を受ける。

 宮小は教室や職員室のある1階が浸水した。16~18日に集中的に清掃を進めた後、機器の修理や床の張り替えを行う。同小の授業再開で市内の公立小中学校の休校は全て解消される。市教委は生活や教育環境が変わる児童をケアするスクールカウンセラーの派遣を検討している。

 宮小では14日、引っ越しが行われ、教職員らが机や学用品をトラックに積んで内郷二中に運んだ。同小2年の藁谷幸那さん(8)は母麻衣さん(29)と片付けを手伝った。「授業が始まれば同級生と会える。うれしい」と再開を待ち望んだ。

■白水阿弥陀堂に調査官派遣へ 文化庁

 文化庁は14日、浸水したいわき市内郷白水町の国宝建造物「白水阿弥陀堂」に調査官を派遣すると明らかにした。被災状況を調べ、修復の必要性や対応を検討する。

 文化庁や市によると、調査官は25日に現地に入る。本堂の他、国重要文化財の仏像があり、庭園を含む境域も国指定史跡になっている。文化庁は分野ごとに複数の調査官を派遣する。

 

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