震災経て防災研究者に 福島県いわき市出身の東北大災害研助教・新家杏奈さん

 

「災害犠牲者を減らすために研究者として努力していく」と話す新家さん

 

2023/11/06 09:31

 

 福島県いわき市出身の東北大災害科学国際研究所助教、新家(しんか)杏奈さん(27)は、古里に大きな被害をもたらした東日本大震災をきっかけに防災に関心を持ち、研究の道に進んだ。今月から、9月の台風13号で大雨被害を受けた市内に調査チームの一員として入り、被災者から当時の状況などを聞き取っている。災害の犠牲者を減らそうと力を尽くしている。

 9月の大雨で浸水被害が集中したいわき市内郷地区。災害発生から約2カ月が経過した地区の集会所で、新家さんは被災者の言葉に耳を傾けノートパソコンに証言を記録していく。研究者として被災した古里に入ったのは初めて。「よく知っている場所の被災状況を見たり聞いたりするのは、心苦しい」と明かす。

 震災が発生したのは中学3年の時。磐城高在学時、津波の挙動を調べるため、仲間とともに市内の海岸線約60キロを北から南まで歩いた。なじみのある沿岸部を壊滅させた未曽有の災害を「悲しいだけで終わらせたくなかった」という。がれきが残る中、一軒一軒回って住民にどこまで津波が来たかを聞き取り、地図に線を引いてハザードマップを作成した。

 高校卒業後、東北大に進学した。国内の津波工学の第一人者である今村文彦教授の下で、避難行動と防災教育を専門に学びを深めた。適切な避難行動が取れるよう、宮城県気仙沼市など津波被災地の住民への聞き取りやアンケートで「何が避難を促し、何が妨げたのか」を分析している。

 「今は津波だけでなく洪水災害への対策も求められている」と指摘する。津波とは違い、線状降水帯に伴う短時間の豪雨などはどのくらいの時間でどこが浸水するかを予測するのは難しい。「経験したことがない災害に備えるには、事前に知識や判断力を養わなければ」と教育の大切さを訴える。今回のいわき市内での調査で「今までこんなことはなかった」との証言が目立つという。「一人一人が自分の命と財産を守れるよう防災教育にも力を入れたい」と話す。

 4月に博士課程を修了して助教になり、研究者の道を歩き始めたばかりだ。「災害の犠牲者を1人でも減らすため、研究者として努力していく」と誓う。

 

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