福島県大熊町の復興拠点に待望の飲食店「食事処 池田屋」オープン 「復興に貢献したい」

 

大熊の復興に貢献する誓いを新たにする孝代さん(左)。右は長男謙太さん

 

2024/05/08 10:45

 

開店した店の前で、大熊の復興に貢献する誓いを新たにする孝代さん(左)。右は長男謙太さん

 

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県大熊町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)内に7日、「食事処 池田屋」が開店した。2022(令和4)年6月に拠点内の避難指示が解除されて以降、飲食店が誕生するのは初めて。神奈川県から昨年移住した池田孝代さん(62)=浪江町請戸地区出身=が家族で切り盛りし、昼から夜まで通しで営業する。「住民や働く人の力になり、復興に貢献したい」と誓う。

 開店と共に来客が絶えない。「いらっしゃいませ」。一緒に店を経営する長男謙太さん(27)、長女倫千代さん(32)の声も響く。孝代さんは「こんなに人が集まるとは思わなかった」と笑みを浮かべた。

 孝代さんは東京都の専門学校を卒業後、浪江町で喫茶店「イフ」を家族で経営した。結婚を機に27歳ごろから神奈川県大和市に移り住んだ。47歳の時に夫を病気で亡くし、子どもの学費のため、神奈川県内で豚丼専門店などを営んだ。

 子育てが一段落し、「浪江の実家に帰ってゆっくりしよう」と考えていた。その矢先に東日本大震災が発生。両親は無事だったが、実家が津波で流された。周辺は災害危険区域に指定され、人が住めなくなった。

 福島で暮らしたい思いは消えなかった。「豊かな自然、人の温かさが忘れられなかった」。県内で住む場所を探し、義務教育施設「学び舎(や) ゆめの森」がある大熊町に魅力を感じた。幼い子を持つ倫千代さんが子育てでき、家族で一緒に生活できると感じた。

 ただ、町の復興拠点内には飲食店がなかった。知人から「店をやって」との声が集まった。「経験を生かそう」。平屋のプレハブを建て、4月から開店準備を本格化させた。食材の仕入れ先を隣町などから確保し何とか開店にこぎ着けた。

 昼は定食や麺類、夜は枝豆やキムチなどの居酒屋メニュー、お酒を提供する。「食に困らず、安心して暮らせる町にしたい」。飲食店経営に関わり約40年。大熊に骨をうずめる覚悟だ。

 店は大熊町下野上金谷平542の2。営業時間は午前11時から午後9時(金、土曜日は午後10時)まで。不定休。

 

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