大阪・関西万博 経産省 福島県の復興展示始まる 浜通り被災市町村 多言語対応強化へ 研究者や観光外国人が増加

大勢の来場者でにぎわう大阪・関西万博の福島復興展示の会場
2025/05/21 10:20

万博の会場に展示されている多言語通訳システム
大阪・関西万博で経済産業省主催の福島復興展示が20日、EXPOメッセで始まった。期間は24日まで。
東京電力福島第1原発事故の被災12市町村に、福島県いわき市、相馬市、新地町を加えた15市町村の事業者らが食やイノベーション、アート、アクティビティなどの各分野で出展している。
オープニングセレモニーに双葉郡8町村の首長が出席し、大串正樹経産副大臣や鈴木正晃副知事、双葉地方町村会長の吉田淳大熊町長があいさつした。
■大阪万博視察 通訳システムに熱視線
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地を訪れる外国人観光客・研究者らへの対応が課題となる中、大阪・関西万博を視察した浜通りの被災市町村は多言語対応の強化に向け、出展された多言語通訳システムの活用に前向きな姿勢を相次いで示した。十数言語に対応可能で瞬時に通訳した音声や文字を表示できる仕組み。役所や震災遺構など公共施設の窓口で、外国人対応が円滑になると熱視線を送っている。
福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)が立地する浪江町の吉田栄光町長は、通訳システムの実証を始めたい意向を示した。エフレイでは500人規模の研究者のうち約3割が外国籍や海外で活躍する人材となる計画で、外国人研究者とその家族の言語を含めた生活環境の整備が課題となっている。復興の現状や教訓を伝える「ホープツーリズム」で被災地を訪れる外国人観光客が年々増えており、南相馬や双葉、楢葉などの首長らも通訳システムに高い関心を寄せている。
システムは総務省と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、大手音響機器メーカーのヤマハ(本社・浜松市)が共同開発した。インターネットに接続せずに同時通訳することが可能で、個人情報がネット上に漏えいするリスクがほとんどないという。
複数人の通訳を雇用する場合に比べ、維持管理費などが低コストで済む利点がある。市町村職員の負担軽減にもつながる。文字や音声だけでなく、擬人化されたキャラクターが身ぶり手ぶりで同時通訳するように表示することもできるのが特徴だ。
被災市町村での通訳システム活用を仲介している福島相双復興推進機構(官民合同チーム)の皮籠石[かわごいし]直征[なおゆき]まちづくりグループ長は「自治体の行政窓口や訪日外国人観光客が多く訪れる施設で、課題となっている多言語対応の一助として活用につながってほしい」と期待している。
2024(令和6)年に県内の旅館・ホテルを利用した外国人延べ宿泊者数は29万1770人(速報値)で、過去最多だった2023年の17万9180人を11万人上回った。ホープツーリズムの2024年度の参加者数は1万9071人で過去最多を更新した。外国人が含まれており多言語対応が急務となっている