災害ロボで命守る 南相馬産業協 大西さん競技会参加 福島県の技術結集「世界一を」

 

「ミソラ2」で優勝を目指す大西さん

 

2025/10/09 10:35

 

 福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドをメイン会場に10日から開かれる国際競技会「ワールドロボットサミット2025」に出場する南相馬ロボット産業協議会の大西威一郎さん(47)=クフウシヤ社長=は「命を救う現場で役立てたい」と決意する。東日本大震災時に災害用ロボットが動かなくなった話を聞いた。「ロボットが使えないことで歯がゆい思いをしてほしくない」との思いが原動力だ。実用性を追求したロボット「MISORA(ミソラ)2」で世界の頂点を目指す。

 2014(平成26)年に神奈川県相模原市で創業し、2019年にロボット産業への支援が豊富な南相馬市に進出。社業を営む中で、地元企業や住民から震災や東京電力福島第1原発事故での体験談を聞いた。「被災地を助けたい」。世界中から企業や支援者らが市内にロボットを持ち込んだが、津波や地震の現場で部品が壊れ、動かなくなったと聞いた。

 「どんなに高性能なロボットも、部品が一つ壊れれば使えなくなる」。震災時に見えた課題を解決すべく、協議会と会津大の合同チームが開発したミソラ2は、多くの部品が壊れても交換できる仕様。操縦するコントローラーも市販品を採用し、簡単に代用できる。2021(令和3)年の前回大会に比べ、ロボットの小型軽量化や一部で半自動の仕組みも整えた。

 「ワンチーム」を合言葉に、協議会に所属する地域の企業と会津大が技術の粋を集めて開発した。大西さんは将来的な機体の実用化も見据えつつ、「ミソラ2はわれわれの技術の『見本市』になっている」と表現する。機体に使われている部品や技術に興味を持った企業、研究者からの注文も狙う。「目標は優勝。技術力の高さを世界に示し、産業の活性化につなげる」と意気込む。

 

■10日からワールドロボットサミット 4年ぶり福島県開催

 WRS2025過酷環境F-REIチャレンジは、福島国際研究教育機構(F-REI、エフレイ)の主催、経済産業省の共催。災害現場でのロボットやドローンの活用を想定した4競技で行う。福島県開催は4年ぶりで、期間は10日から12日まで。国内外の計39チームが出場予定。一般入場の申し込みを受け付けている。競技のライブ配信も行う。詳細はエフレイやWRSの特設サイトで確認できる。

 別競技のWRSが7月に大阪府で開かれた。12月には愛知県で開催される。

 

■県内4チーム出場

 県内からは他に3チームが出場する。過酷環境ドローンチャレンジに、南相馬ロボット産業協議会と会津大が共同開発した「マルスゼロ」が参加する。浪江町のロボテス浪江滑走路と約13キロ先の南相馬市のロボテス間を往復し、空撮や建物内部の情報収集を行う。

 無人航空機(UAV)を開発する協議会員のハマ(旧スペースエンターテインメントラボラトリー)を中心に約1年で完成させた。搭載している小型機を空中で切り離し、建物内部を調べる。協議会の下部組織で開発を担った航空宇宙産業研究会の高山慎也会長(60)=アリーナ社長=は「世界最高峰の技術がぶつかり合う舞台を楽しみ、頂点を取る」と決意を述べた。

 仮想空間で消火や経路確保に対応するシミュレーション災害チャレンジに会津大の「REL―UoA」、災害現場で想定される過酷環境下での性能を評価する標準性能評価ドローンチャレンジに、同大の「UoA―Flight」が出場する。

 

関連記事

ページ上部へ戻る