確定判決分析へ 東京電力福島第一原発事故の「中間指針」見直し要否判断 原賠審

 

2022/04/28 10:13

 

 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は、東京電力福島第一原発事故に伴う国の賠償基準「中間指針」の見直しの必要性を検討するため、最高裁で確定した集団訴訟判決の詳細分析を法律専門家らに依頼する方針を固めた。中間指針を上回る東電の賠償責任が確定した7件について、今夏をめどに専門家らから中間報告を受け、最終的に原賠審が対応の要否を判断する。27日の会合で申し合わせた。

 ただ、いつまでに分析を終えて判断するかは未定。内田貴会長(東京大名誉教授)は「(指針を)見直すか現時点ではブランク(空白)」と語った。判断が先送りされれば、被害救済が停滞する恐れがある。

 会合では、指針の見直しを含めた対応の必要性を判断する上で、確定した判決に関する詳細な調査や分析が不可欠との見解で一致。具体的には(1)各判決における指針に対する評価や位置付け(2)類型化できる損害項目や賠償の算定方法のうち、指針に示されていないものがないか-などを調べる。

 分析は、原賠審から依頼を受けた裁判官経験者や弁護士ら法律専門家ら数人が担う。指針の策定に携わった有識者も加わる方向。調査・分析を進めた上で中間報告を含めて結果を複数回報告する。

 委員からは「判決と中間指針との関係性を正確に分析するべき」「判決の中で、どこが地元の人の思いをくみ取った部分なのかを調べる必要がある。それが地元に添った指針見直しにつながる」などの意見が出た。

 現行の指針は2013(平成25)年12月以来、大幅には見直されていない。原賠審は直ちに指針見直しにつなげるべき新たな損害や賠償の範囲は確認されていない-などとして、見直しを見送ってきた経緯がある。

 福島県原子力損害対策協議会は19日、裁判所が認めた被害額と指針との間に差があるとし、国に指針見直しを要望。原賠審の対応が焦点となっている。

 

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