【復興への動脈】輸送効率化商機に 販路拡大に期待 移動時間短縮、リスク減 産業振興
東北中央自動車道「相馬福島道路」(総延長四五・七キロ)は二十四日、全線開通する。二〇〇四(平成十六)年四月の事業化から十七年。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの「復興支援道路」に位置づけられ、整備が急加速した。無料で通行できる新たな動脈の誕生で、物流、経済、医療、県をまたぐ広域観光の伸展など幅広い分野への効果が期待される。
二十日、相馬市西部の玉野地区にある伊達物産(本社・伊達市)の加工場から伊達鶏やハーブ鶏などの冷凍食肉を積んだトラックが東京に向けて出発した。
「移動時間の短縮につながり、事故などのさまざまなリスクを減らせる」。社長の清水建志さん(36)は全線開通を歓迎する。首都圏への商品輸送は桑折町の業者に委託している。現在、輸送トラックは桑折町内から三四九号国道などを通った後、霊山インターチェンジ(IC)から、加工場に近い霊山飯舘ICまでの区間を使用している。全線開通すると、会社に近い伊達桑折ICから直接、相馬方面に向かうことができる。所要時間が十~二十分短縮され、輸送を効率化できる。
二〇一八年に相馬玉野-霊山IC間が開通するまで、工場に向かう道はカーブが連続して高低差が大きい一一五号国道に限られた。積雪時はトラックが進めず、伊達物産の従業員の私用車を使ったこともあった。
出荷先は首都圏の飲食店のほか、仙台市や福島市、郡山市など県内外に及ぶ。相馬市の加工場で商品を積み、相馬福島道路を経由して主に東北自動車道の通行を予定している。特に首都圏への時間が短くなることで、時間に余裕ができ、より多くの飲食店に商品を届けられる。災害や事故で高速道路や幹線道路が通行止めになった場合でも相馬福島道路を使えば、常磐自動車道に回れるなど迂回(うかい)路にスムーズにつながるとみている。
伊達鶏は市内や周辺自治体で育てられ、地場産業の一つになっている。同社は加工品も扱っているが、この一年、新型コロナウイルス感染拡大で出荷量が二割程度落ち込んだ。今後、流通量を回復した上でさらに量を増やし、販路を拡大する計画だ。清水さんは「開通を機に、より多くのお客さまに伊達鶏を届けたい」と期待を込めている。
■企業誘致の促進も
相馬福島道路の全線開通で、企業誘致の促進や定住人口の拡大が期待される。
伊達中央IC周辺では相馬福島道路が各所につながる利便性を生かし、新工業団地をつくる計画がある。伊達市が同ICから南東に約一キロの土地に年内の造成を予定している。製造や物流業者の誘致を想定している。市内外の企業から立地に向けた相談があり、市商工観光課の野田善和課長(50)は「ICが近いことが利点になる」と手応えを口にする。
市は新工業団地全体で四百~五百人の雇用を見込んでいる。団地まで車で約十分の阿武隈急行高子駅の北側に住宅団地を造成中で、定住人口増を目指す。
福島市は福島大笹生ICの隣接地に工業団地「福島おおざそうインター工業団地」を整備している。一期分の六区画のうち、五区画で立地が決まった。引き合いが多く、市は第二期造成を行う方針。
新型コロナウイルス感染拡大を機にテレワークを活用した企業の地方移転が進む一方、業績が悪化する企業もあり、誘致が順調に進むかが課題だ。