飯舘村をモデルに震災からの復興描く 仙台市の漫画家じんのあいさん

 

原発事故などについてまとめた資料を見つめるじんのさん

 

2022/03/31 17:53

 

作品の一場面。主人公の聡子が北山と、村の美しい夜空を見上げる

 

作品の一場面。原発事故によって村が受けた影響を聞き、ぼうぜんとする聡子

 

作品の一場面。仮設住宅に集まった地元青年団員と再起を誓う聡子

 

 仙台市在住の漫画家じんのあいさん(35)は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故をモチーフにした作品「星の輝き、月の影」を漫画誌で連載している。舞台のモデルになっているのは家族と共に訪れた福島県飯舘村だ。避難を余儀なくされ、古里から離れた地で奮闘する人々を描いている。「つらく苦しい状況であっても前へ歩み続ける姿を伝えたい」と復興への願いを託している。

 物語は、教師となる夢を諦め地元の村役場で働いている聡子が、同級生の牛の畜産農家・北山と出会う場面から始まる。北山との仲が深まるにつれ村の魅力を実感していく中、震災が起きる。聡子は海辺へ出掛けていた北山の行方が分からないまま、原発事故の影響で避難する。古里を離れる住民の葛藤や仮設住宅での触れ合いなどを温かなタッチで表現している。

 2018(平成30)年、福島県福島市出身の父と共に初めて飯舘村を訪れた。「牛のいない牛舎や荒れた草花を見て、人の営みがなくなってしまうつらさを実感した」と振り返る。村の情景を見て自然と創作意欲が湧き上がり、震災をテーマにした短編漫画を書き上げた。その後、10回の校正などを経て、昨年2月から長編漫画として連載している。

 物語を支えるのは、震災と原発事故の影響を知るために入念に重ねた取材だ。飯舘村や岩手県の仮設住宅に足を運び、住民と交流を深めた他、研究者らの勉強会にも積極的に参加している。「東北という土地を見つめ直すきっかけにもなった」と語る。

 今年3月16日夜に発生した福島県沖を震源とする地震を自宅で経験し、災害はいつでも起こり得ることを改めて実感したという。その上で「どう生きていくかを考えなければならない。作品を通して、その機会をつくれたらうれしい」。被災地に向き合いながら、希望を紡ぎ続ける。

   ◇  ◇

 「星の輝き、月の影」は小学館のビッグコミック増刊号で連載しており、今年3月に第1巻が刊行された。第1巻はA5判、160ページ。1180円。

 

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