クマガイソウ奇跡の開花 困難克服3年ぶり公開 福島県いわき市

 

今年も無事に花を咲かせたクマガイソウを見つめる忠徳さん

 

2022/05/11 09:50

 

 

 福島県いわき市田人町の「綱木クマガイ草を守る会」の会員は美しく咲き競うクマガイソウの保護への意欲を燃やす。新型コロナウイルス感染拡大で一般公開が中止になり活動資金が不足する中、今年1月には隣接する住宅が火災に見舞われた。度重なる困難を乗り越えて3年ぶりの一般公開が始まり、会員は地域の宝を次世代につなぐ決意を新たにする。

 「一時は咲くことはないと思ったが、今年も無事に見頃を迎えることができた。まさに奇跡だ」。いわき市田人町石住字綱木地区で保護活動を行う守る会の平子忠徳さん(69)は、標高約400メートルの山あいに咲くかれんな花々を見つめ、感慨深げに語った。見頃は今週末ごろまで続く。

 細い山道の先にある小さな集落は、群生するクマガイソウを約40年間大切に守ってきた。コロナ禍前には花々を観賞しに約6000人が訪れる人気のスポットになった。2020(令和2)年から2年続けて一般公開が見送られたが、忠徳さんや妻の清子(70)さんを中心とした守る会のメンバーが苗の間引きや堆肥づくり、遊歩道の整備など毎日欠かさず手入れを続けてきた。

 今年1月に群生地に隣接する住宅で火災が発生。忠徳さんは「火の勢いが大きく、クマガイソウは全滅したと思った」と当時を振り返る。守る会の事務所は全焼し、保護活動に使うくわや一輪車なども焼失した。

 ただ、来客の休憩所として利用していた建物や堆肥などは燃えずに残った。「綱木は風が強い地域だがあの日はほとんどなかった。不思議な力に守られた気がした」。新たにプレハブ小屋を設けるなど準備を続け、開花までに観光客を迎え入れる準備を整えた。

 綱木地区は近年、高齢化と過疎化が進み、発会した2014(平成26)年は約40人いた守る会のメンバーも現在は15人ほどに減少した。忠徳さんは「クマガイソウの手入れが生きがい。体が動くうちはずっと携わりたい」。地域の熱い思いに支えられ、綱木のクマガイソウはこれからも美しい花を咲かせ続ける。

 

■協力金は300円、花苗販売も

 守る会は一般公開に当たり協力金として来場者から300円を募っている。5月28、29日、6月4、5日は、現地で間引きした苗の鉢植え販売会を開く。価格は1株400円(税込み)。協力金や売上金は全て保護活動に使われる。

 

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