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福島の花に思いをこめたキャンドルを飯舘村から―「工房マートル」キャンドル作家・大槻美友さん―
2021年5月、飯舘村の古民家を改装したアトリエ「工房マートル」がオープンした。
キャンドル作家で飯舘村地域おこし協力隊の大槻美友さんが、自身の作品制作やキャンドルづくりのワークショップなどを行っている。
工房マートルは、飯舘村の町中から10分ほど山合に入った場所にある。門をくぐり、玄関の引き戸を開けてまず目に入るのは、太くて大きな色とりどりのキャンドルと、天井近くから吊るされているドライフラワーの数々。「寒いので、スリッパをどうぞ」と大槻さんが勧めてくれる。そのスリッパは、革製のあたたかなもの。センスと気遣いが感じられる。
工房内にあるドライフラワーは、飯舘村をはじめとした福島県産の花。ドライフラワーの束ひとつひとつに、大槻さんの字で生産地が記載されている。飯舘村、新地町、福島市、などなど……。大槻さんが生産者のもとに足を運び自ら摘み取ったものもあり、仕入れからドライフラワーへの加工まで、すべて大槻さんが行っている。「飯舘村に来るまでは、花屋さんで買ったりもしていました。ですが実際に生産者の方のところに行って話を聞くと、一つの花を育てるのに、非常に多くの時間と手間と思いが込められていて、そのこだわりを知ってから制作できる今の環境はとても恵まれていると思います」と笑顔を見せる。
大槻さんは福島市出身。小さいころからものづくりが好きで、中学では美術部に所属。大学時代は工業製品などのデザインを勉強し、新卒で、理念に共感したインテリアや衣料・食料品を扱う大手メーカーに就職した。
転勤で北海道に勤務しているときに出会ったのがキャンドルだった。仕事や将来に悩んでいた時期だったこともあり、ものづくりをしている人たちがとてもキラキラして見えた。仕事以外の趣味を、と探しているときに偶然出会ったキャンドルショップでキャンドルづくりをする中でものづくりへの思いが高まり、20代のうちにやりたいことをやりたい、とキャンドル作家へ身を転じた。2022年で4年目になる。
また大槻さんには、東日本大震災の経験から、ものづくりで福島の明るい側面を発信したい、という思いがあった。高校1年生の時に震災を経験し、それまでの「早く地元から出たい」という気持ちから、福島の良さに目を向けるようになった。「震災があったからこそ、福島への見方が変わりました。福島にちなんだものづくりを通じて、福島のいいところが伝わるといい。そういう思いから、(原発事故での避難を経験した)ふくしま12市町村に暮らしながら、福島を発信することは自分の理想に合っているなと思い、地域おこし協力隊として飯舘村に移住しました」。
その言葉通り、大槻さんのつくるキャンドルは、飯舘村や福島県内で育った草花が大きな存在感を放つ。「キャンドルは、ただ置いてあるだけでも楽しめるし、火を灯すと、炎のゆらぎでとても癒されると思っています。今の時代はいろいろな明かりがあるけれど、わざわざ自分で火を灯すという原始的な体験が残っているのは、本能的に求められている部分もあるのかなと思います」と大槻さん。「キャンドルを灯しているときも、つくっているときも無心になれるんです。日常の中で、無心になる時間ってあまり無いですよね。そういう時間を持てるのも、キャンドルの魅力の1つかなと思います」。
飯舘村の冬は厳しく、12月~3月の間は工房は休業中だが、大槻さんはキャンドル制作や新たな商品開発をしながら、キャンドルや飯舘村の魅力を、SNSなどを通して積極的に発信している。福島の草花が芽吹く春になったら、ぜひ飯舘村を訪れて、大槻さんの思いに触れて欲しい。
(文・山根麻衣子、写真・中村幸稚)
基本情報
工房マートル
〒960-1721 相馬郡飯舘村飯樋原361
不定休(12月~3月は冬季休業)
公式SNS
・インスタグラム 工房マートル from iitate https://www.instagram.com/atelier.myrtlee/
・Facebook 工房マートル https://www.facebook.com/atelier.myrtle
※オープン日、イベント出店などは、公式SNSの投稿でご確認ください
問い合わせ me04you02@gmail.com