広野駅前に「居場所」をつくる ~多世代交流スペース「ぷらっとあっと」~

 

JR常磐線の広野駅からほど近い場所に、2011年の東日本大震災前には、「アイアイ」というショッピングセンターがあった。(正式名称は「AiAi 協同組合ショッピングプラザ広野」)広野町出身や在住の人に「アイアイ」の話をすると、笑顔がこぼれ、思い出話があふれてくる。

多世代交流スペース「ぷらっとあっと」は、そのアイアイの敷地内「アイアイ会館」の1階にある。「ぷらっと」来て、「アットホームに」過ごせるように。プラットホームになるような場所に。@~=来た人の居場所に。スペースの名前には、たくさんの思いを忍ばせてある。

 

 

基本的には、レンタル&交流スペースとして運営しているが、学生たちの課外活動の場に、ヨガや体操などの講座に、パソコン教室に、学校帰りや休みの日に、狙い通りにぷらっと訪れる人も多いという。Wi-Fiも完備されているので、ちょっとしたコワーキングも可能だ。

運営するのは「ちゃのまプロジェクト」。広野町に思い入れのある、立場も年代も違う3人が共同代表をつとめる。今回は、それぞれの「ぷらっとあっと」のお気に入りの場所を教えてもらいながら、施設の紹介をしてみたいと思う。

1人目・磯辺吉彦さんは、ぷらっとあっとの入口を出てすぐの、常磐線が見えるところが大のお気に入りだという。

 

 

「常磐線が通っていて、広野駅の反対側にある新しいオフィスビル、そして県立ふたば未来学園の寮も見えるここは、最高の景色!」と話す磯辺さんは、ものづくりのスペシャリスト。広野町生まれ、広野町育ちで、30年以上地元の大企業でエンジニアを勤めた。震災後には「広野わいわいプロジェクト」を立ち上げて、県内外のボランティアとオーガニックコットンを育てたり、津波跡地の防災緑地の管理などを行っている。ぷらっとあっとの内装やDIYもほぼ磯辺さんの手によるものだ。

入口をはいってすぐのガレージスペースには、2台の移動式の本棚「ブックシェアサービス」がある。ブックシェアを手掛けたのは、2021年夏にぷらっとあっとでインターンをした大学生たち。「本を通じた人とのつながり」をテーマに、近隣に住む大人たちからぷらっとあっとに本の寄贈を募ったところ、300冊以上の本が集まった。ブックシェアの本は、館内で自由に読むことができるのだが、

 

 

なんと、本棚の中でも本を読むことができる。「本を読むときって、一人になりたいんじゃないかって、大学生たちからの提案なんです。ちょうど人1人がすっぽり入る寸法なんですよ」と言って中に入ってくれたのは、2人目のちゃのまプロジェクト・広野町起業型地域おこし協力隊の大場美奈さん。

 

 

ガレージを抜けて館内に入ると左手に、パステルカラーが愛らしい受付カウンターがある。普段大場さんは、ここに座って受付をしている。「このカウンターも、私たちはシンプルに装飾なしにしようと思っていたんです。でもオープン当時手伝ってくれていた、地元・ふたば未来学園高校の生徒たちが色を付けたいっていうのでお任せしました。以来、この色がぷらっとあっとのイメージカラーになっています」。

 

 

受付から続く、同じ色合いのカウンタースペースがお気に入りだというのが、3人目に紹介するちゃのまプロジェクトの青木裕介さん。広野町出身の青木さんは、このぷらっとあっとの一角に事務所を構え、パソコン教室も運営している。「私にとっては仕事場でもあるんですけど、たまに煮詰まっちゃうんですよね。そういうときは自分のパソコンを持ち込んでここで仕事をしていることも多いんですよ」。このカウンターも、高校生たちから「カフェみたいなテーブルで勉強したい」というリクエストで高めのカウンターにして、カフェ風の椅子を譲り受けるなどしたそう。ぷらっとあっとには、そこここに、学生たちの思いが反映されているのだ。

 

 

一番奥の広いスペースがお気に入りだというのは、先ほど本棚に入ってくれた大場さん。大場さんはこのスペースでヨガや健康体操教室などを行っている。口コミで参加者が増え、大場さんに健康の相談をしたり、ヨガのポーズを深めたいというリクエストがあったりするという。「地域の人たちのニーズに合わせて対応していきたいとは思っていたのですが、想像以上に受け入れてもらえてとても有難いなと思います」と笑顔を見せる。

 

 

また、大型スクリーンやプロジェクターもあるので、映画の上映会やオンラインイベントなど、レンタルスペースとしての利用も可能。靴を脱いで使用するため、お母さんが子どもを遊ばせたり、放課後にただただリラックスしている学生がいたりと、それぞれの用途で自由に利用されているようだ。

 

 

広野町に、ぷらっと立ち寄れる「居場所」が欲しい――。震災後の町内には、公民館や商業施設はあるものの、目的なく、ただ立ち寄れるような場所がなかった。3人が構想を持ち寄り、ちゃのまプロジェクトをスタートさせたのは2019年の11月ごろ。ぷらっとあっとの正式オープンは2021年の4月だが、オープンまで約2年半活動を続けてきた結果、ぷらっとあっとは地元に馴染んできたのだろう。

 

 

「『多世代交流スペース』の名前の通り、3世代が集える場所になればいいなと思っていたけれど、今実際にそうなっているのを見られるのはうれしいですね」と青木さん。ぷらっとあっとの今後については、「広野町のことならぷらっとあっとへ。そういう場所になっていきたいなと思います。地元の人はもちろん、外から来た人にも利用してもらって、『人のつなぎ目』のような役割を果たしていきたいです」と磯辺さんが力強く話してくれた。

 

JR広野駅から歩いて3分の場所にある、子どもと学生と大人を、地元と外の人をつなぐ、ぷらっとあっと。アイアイ会館1階の、今後の展開に期待したい。

 

文・山根麻衣子、写真・中村幸稚

 

基本情報

多世代交流スペースぷらっとあっと

営業日 月〜土 11:00~19:00、日・祝 11:00~16:00

定休日 水

住所 〒979-0402 双葉郡広野町下北迫折返35-4 アイアイ会館1F

電話 0240-23-6882

アクセス JR常磐線広野駅から徒歩3分

公式HP https://select-type.com/p/plat_at_hirono/

Facebook 多世代交流スペースぷらっとあっと https://www.facebook.com/plat.at.hirono/

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