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いちごでしかできない、大熊でしかできない「いちご工場」
大熊町は2019年8月、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所による避難指示が解除された大川原地区に「大熊町いちご栽培施設(以下、いちご工場)」を開所しました。
約2ヘクタールの太陽光を利用したビニールハウス内で、夏いちごと冬いちごを1年に1回ずつ、合計2回栽培します。
2021年は冬いちごとして、かおり野・紅ほっぺ・やよいひめの3種類を栽培。施設内や大熊町内の店舗、近隣町村の道の駅などで販売し、好評を得ています。
(大熊町産のいちご、やよいひめ)
東京電力福島第一原子力発電所が立地する大熊町で営農を再開するにあたり、町が推進したのはいちごの生産でした。現在、日本でのいちごのシーズンは冬から春にかけて。夏のいちごは大半が輸入なのだそうです。「だからこそ、ビジネスになるんです」と、いちご工場を運営する、ネクサスファームおおくまの工場長・徳田辰吾さんは話してくれました。
「日本のいちごは世界で戦える品質。まだ生産者の少ない夏いちごの生産が安定すれば、町に新しい産業をつくることができます」と徳田さん。震災前の大熊町では、梨やキウイの生産が盛んでしたが、国内での需要の高い夏いちごだからこそ、他のいちご生産者と競合しないビジネスとして、チャンスがあるといいます。
「生業に育てるまではもちろん大変ですが、町が最新鋭の施設を用意してくれているので、人を育て、産業を育てることに注力することができます。いちごだからこそ、大熊だからこそできる、いちご工場だと思います」と徳田さん。
(いちご工場の外観)
従業員も、農業経験者より、未経験の人の方が多いそうです。「大規模施設での農業は、従来のやり方とは仕事の内容が大きく異なります。なので、全く経験がない人の方が呑み込みが早い場合が多いのです。夏と冬、1年に2回いちごを生産し、分業化により効率的に農作業を進めることができるので、多くの作業や技術を短期間で習得することができるのも、いちご工場で働く大きなメリットです。多くの農業が機械化を進めている中、大熊では機械とコンピュータと人の分業を図り、施設管理と栽培技術の経験を積むことができるので、この環境を最大限に生かし、従業員さんに選択肢の多い未来を残したいですね」。
ネクサスファームおおくまでは、いちごを使った商品やメニューの開発なども行っています。その際にこだわっているのは、福島県内の企業や団体と商品開発を行うことです。
「原発事故では、大熊町だけでなく、福島県全体が大きな被害を受けたので、大熊町のいちごでつくる加工品は『メイドイン福島』として、県内の企業様に少しでも還元できる取り組みにしたいと思っています」と徳田さん。
ジャムは白河市、セミドライフルーツは福島市、こんにゃくゼリーは桑折町と。いちごを通して県内企業とつながりをつくることも、とても大事なことだと、徳田さんは考えています。
まだ始まったばかりの大熊町のいちご工場ですが、その中にはさまざまな可能性を秘めているように感じました。
大熊町のいちご「おおくまベリー」や加工品を見かけたら、ぜひ食べて、味わって、新しい大熊町の農業を感じてみてください。
文・写真 山根麻衣子(双葉郡在住ローカルライター)
株式会社ネクサスファームおおくま
住所 双葉郡大熊町大字大川原字西平2127
電話 0240-23-7671
公式HP https://nexus-f.co.jp/