葛尾村復興交流館あぜりあ

 

あぶくま高原に位置する福島県葛尾村落合地区の中心部、葛尾川と野川川の合流地点のすぐ脇に木の温もりを感じる公共施設があります。2018年6月、東日本大震災と原子力発電所事故からの復興のシンボルとしてオープンしたその施設とは「葛尾村復興交流館あぜりあ」。

「あぜりあ」は英語で、和訳すると「つつじ」。

つつじが村の花なので、それが施設名の由来なのだといいます。地域の情報を伝えたり、特産品を販売したり、運転の合間の休憩場所になったり、時には会議やイベントで使用したりと、村内外の方に親しまれています。

建物は2つの川の合流地点に合わせて自然に溶け込むよう、曲線を描いた施設になっています。木材をふんだんに使用し、木の香りを感じることができる建物です。この建物は縦ログ構法という少し変わった建築法が用いられています。この構法は、木材を地域の工場で一定の大きさに切り揃え結束し、木の壁を作って建てます。ですので、つなぎ目のない木材が綺麗な木目を見せてくれます。葛尾村内で150年以上前に建てられた百石の家を解体する際、古く立派な梁を移築し、復興交流館の上部に飾りとして取り付けました。施設内の商品の展示棚やテーブルにも百石の家の木材が活用されています。葛尾村の過去と未来をつなぐ施設になってほしいとの思いが込められています

建設にあたっては、村と包括連携協定を結んでいる日本大学工学部の浦部智義建築学科教授がコーディネーターを務め、はりゅうウッドスタジオやNPO法人福島住まい・まちづくりネットワークの皆様などの力添えをいただきました。建物の整備だけにとどまらず、使用されていなかった蔵の再整備や景観を意識した草木の植樹、人々が交流するためのイベント企画などにも積極的に関わっていただいています。春には自転車ロードレース大会「ツール・ド・かつらお」のスタート地点、夏には葛尾村盆踊りの会場になるなど人々が交流する拠点としての役割を果たしています。これらの一連の活動と実績が評価され、葛尾村復興交流館「あぜりあ」は2020年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

この施設の敷地を散策すると、葛尾村に向けられた温かな気持ちを感じることができます。駐車場脇の芝生のスペースには、日本三大桜の一つとして有名な「三春滝桜」の子孫樹が植えられています。葛尾村役場仮庁舎や仮設住宅は6年以上、三春町にありました。全村避難で古里に帰れない中、三春町の方々は温かく受け入れて下さったのです。さらに復興交流館あぜりあがオープンした年の9月、三春町から子孫樹を寄贈されました。今でも葛尾村の復興公営住宅は三春町にあり、行政だけではなく民間レベルでの交流も続いています。

三春滝策の子孫樹のすぐそばには、葛尾川の歌碑があります。前に立つとメロディーが流れてくる優れものです。葛尾川の作詞者は福島市在住の矢口洋子さん、補作詞者は双葉町出身の故三本杉祐輝さん、作曲は会津坂下町在住の江川博幸さんです。三本杉さんはかつて葛尾中学校で教鞭を振るった国語の先生でした。葛尾村の四季が目に浮かぶかのようにしたためられた歌詞が愛郷心を駆り立てます。

作曲を担当した江川さんが住む会津坂下町は葛尾村が避難直後にお世話になった場所です。約5カ月間、体育館や宿泊施設などで避難生活を送りました。会津坂下町の他、柳津町、三島町、金山町、只見町に分散してお世話になりました。この時に生まれた絆を感じることができる曲です。江川さんがリーダーを務める音楽バンド「B2mac Special(ビートマックスペシャル)」に歌と演奏をお願いしました。避難指示が一部を除き解除された6月の節目などには、ビートマックスペシャルをお招きしたイベントも企画しています。

日本大学工学部と連携したロハスの花壇や蔵の保存、蔵周辺の整備によって、景観が日に日に良くなっていっています。

トレーラーハウスを活用する準備も進めており、来年の暖かくなった頃には、軽食やカフェなどができるかもしれません。川のせせらぎを聞きながら、美味しいコーヒーを飲み、無料Wi-Fiを使って仕事をする。まさにワーケーションができる施設になっているかもしれません。ぜひご期待ください。

葛尾村復興交流館あぜりあは「道の駅」ではありません。
自由な発想で色んな交流が生まれる場所なのです。これまでには、流しそうめんやバーベキューなどを通して子供たちの交流会を催したこともありました。さらには音楽イベントを企画したこともあります。エコクラフト教室や子育て支援のワークショップなどにも活用されています。ロードレースの合宿の際の休憩拠点にもなりました。新型コロナウイルスの流行後には、無料Wi-Fiやディスプレイなどを活用してネット会議をする方も増えています。活用する方次第で、色んな顔を見せてくれる施設です。

電気自動車の充電スポットがあったり、太陽光パネルを使用した街灯があったりと、葛尾村が推進しているスマートコミュニティを感じることができる施設でもあります。また、放射能検査室も入居し、原発事故の爪痕を感じることができる施設でもあります。

 葛尾村を訪れて立ち寄ると、ただのトイレが綺麗な施設かもしれません。道の駅ではなく、食事もできない施設かもしれません。ただ、ここにある一つひとつのものは、しっかりと意味があって存在しています。きっと皆様の身の回りの施設やものにもそういった一つひとつのエピソードがあるのではないでしょうか。小さなことかもしれませんが、そういうことを感じ取ることができれば、少し心が豊かになるのかもしれません。

葛尾村復興交流館あぜりあは、地域の復興状況に合わせてこれからも変化を続けるでしょう。そして、多くの方の温かな気持ちをより感じることができる施設にきっとなるでしょう。建物に命を吹き込むのは、やはり人間なのかもしれませんね。

ぜひ葛尾村にお越しの際、通過される際はお立ち寄りください。

【定休日】
火曜日(火曜日が祝日の際は翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)

【開館時間】
9:00~17:00

【問合せ】
電話0240-23-7765
メールk.muradukuri@katsurao-kosya.or.jp

一般社団法人 葛尾むらづくり公社

投稿者プロフィール

葛尾村が東日本大震災及び原子力災害による長期にわたる避難からの復興に取り組む中、村民が主体的に活躍、交流できる機会や場の提供などを通じて、人と人を「繋ぐ」役割の中核を担い、村民の絆を維持するとともに地域資源を活かして新たなにぎわいと活力を創出し、交流人口の拡大と地域活性化を図ることにより復興と魅力あるむらづくりに寄与することを目的としています。

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