浪江町とともに歩む、絶品中華そば・麺処ひろ田製粉所

 

浪江に、めちゃくちゃうまいラーメン屋ができたらしい。

しかも、新しくできた道の駅に。

そう聞いて浪江までやってきた。

道の駅で一番うまいラーメン屋

麺処ひろ田製粉所は、2020年8月1日にオープンしたばかり。

常磐線浪江駅からも歩いて15分の場所にあり、福島の浜通りを電車で旅したい人も気軽に訪れることができる。

道の駅なみえは、浪江町復興のシンボルとして注目をあびている。木の温かみと注ぎ込む優しい光が印象的。そんな素敵な道の駅のフードコートにお店はあった。

おすすめは何といっても味玉中華そば。

なるべく地元や福島の素材にこだわり提供しているそう。

鶏ベースで、福島らしいあっさり醤油スープ。でも、しっかりとしたコクがある。

太陽の光が差し込んだときのスープの輝きは、美しいの一言だった。

猪苗代産の小麦を使った細ストレートの麺は、小麦感が強く美味しい。

さすが、“製粉所”というだけあって新鮮なのだろう。小麦の味を感じられる。

そして何より驚いたのが、トッピング一つ一つのクオリティが高いこと。

生姜が香る柔らかチャーシュー、シャキシャキのメンマ、出汁が染み込んだ半熟味玉。

どれもこれも、おつまみとして食べたくなってしまうレベル。

特に味玉は必ずオーダーしてほしい逸品。感動をわかち合いたくて同伴者に半分あげてしまったくらいだ。

正直、道の駅にあるラーメン屋というと、あまりこだわりはなく、そこまで期待せず食べるラーメンのようなイメージがあった。

しかし麺処ひろ田製粉所は、道の駅クオリティを越えた本当に美味しいラーメン屋であった。

浪江・道の駅・美味しいラーメン屋。

私にとっては新鮮な言葉並びに興味がわき、店主の和泉さんにお話を伺った。

NPOからビジネスへ

白河市出身の和泉さんが浪江町と関わりを持つようになったのは2016年。

東日本大震災後、避難を余儀なくされバラバラになったコミュニティ再生支援などをおこなうNPOに就職をしてからのこと。

2018年には浪江町に移住。人が集う場所作るべくゲストハウスあおた荘をオープンし、コミュニティ支援や移住支援などをおこなってきた。

現在は、株式会社浜のあきんどを立ち上げ、NPOからビジネスの世界へと舞台を移し「地域の課題を仕事につなげていく」べく精力的に活動されている。

麺処ひろ田製粉所は、「道の駅なみえに出店するけど一緒にやらないか」と知人から話があり、浜のあきんどの飲食部門として和泉さんが運営することになったそうだ。

和泉さんは他にも、えごまの栽培や相双地区の農作物の加工販売なども手掛けている。

日本一のえごま生産地に

和泉さんは、浪江で新規就農した若手農家とともに「なみえファーム」を立ち上げ、2019年からえごまの生産をしている。

栄養価の高いスーパーフードとして最近知名度も上がってきたえごま。和泉さんは、自分たちで栽培し収穫したえごまを加工し商品開発をおこなっている。

いわきのデザイナーさんがデザインしたパッケージは可愛らしく、どちらも道の駅なみえで購入ができる。お土産としてもおすすめ。

えごま栽培も加工も始まったばかり。今後は浪江が、えごまの名産地となるために日本一の生産量を目指していくという。

現在は、「白えごまと海の幸のSIOふりかけ」と「えごまミックス粉」の2つのみだが、加工場も新しくしラインナップを増やし、また相双地区の農作物の加工販売も積極的に請け負い、地域商社として地域に貢献をしていくという。

今回訪れた麵処ひろ田製粉所が出店している道の駅なみえは、2021年グランドオープンを迎える。

グランドオープン後は、震災の影響で浪江から山形に拠点を移していた鈴木酒造店の酒蔵ができ、大堀相馬焼の陶芸体験などもおこなわれる。

道の駅らしく相双地区のお土産がずらりと並ぶだけでなく、地元の野菜を購入することもできる。道の駅として初めて、無印良品も出店予定とのことで、ますます地元の人からも愛される場所になりそうだ。

実際、麺処ひろ田製粉所も周辺で働くビジネスマンや作業員の方たちで賑わっていた。

少しずつ歩みを続けてきた浪江町

浪江町は、東日本大震災後帰宅困難地域に指定され、2017年3月31日まで全域で避難指示が出ていた。

いまだに山間部の地区では帰宅困難地域となったままで、震災以前は20,000人以上あった人口は10%にも満たない1500人程度。

そう聞くと、ネガティブなイメージを持ってしまうが、和泉さんが移住した2018年は人口100人程度だったという。

土日はコンビニも閉まっていたが、毎日営業しているスーパーができ、飲食店も少しずつ営業をはじめた。

2018年にはなみえ創成小学校・中学校が開校し、2020年3月には9年ぶりに常磐線が全線開通した。

ますます盛り上がりを見せる道の駅は今春グランドオープン予定。福島県で最大の牧場ができる計画もあるという。

人々の記憶の片隅で、ずっと歩みを続けてきた浪江町。

そんな町とともに歩む和泉さんや活躍される方たちに想いを馳せながら頬張るラーメンは、なんだか味に深みを感じた。

「浪江・道の駅・美味しいラーメン屋」、そして「えごま」。

きっと数年後には、浪江を表す代名詞として、新鮮な言葉並びではなくなっているであろう。

また、来れますように。

麺処ひろ田製粉所

住所:福島県双葉郡浪江町大字幾世橋字知命寺60 道の駅なみえフードコート内

開館時間:11時から18時まで

定休日:毎週水曜日

WEBサイト:https://tanatsumono.co.jp/mendokoro_hirota/

鈴木俊良トラベルライター

投稿者プロフィール

神奈川県横浜市生まれ。学生の頃から国内外を旅して歩き、現在はミャンマーを拠点に旅づくりのお仕事を行う。 何気ない日常の中に存在する豊かな暮らしや文化を感じることが好き。

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