フィールドロボットの未来は、福島で創られる

ロボットフィールドの今

 「福島ロボットテストフィールド」は福島イノベーション・コースト構想に基づき整備された、陸・海・空のフィールドロボットの一大開発実証拠点。インフラや災害現場など実際の使用環境が再現された、ロボットの性能評価や操縦訓練等ができる世界に類を見ない施設だ。

以下に、ロボットテストフィールドの基本理念と行動指針と紹介させていただく。

 基本理念は、ロボットの社会実装により、安全で豊かな社会の実現に貢献する。

 行動指針は、福島復興をけん引するエンジンとして、我が国を代表するロボット社会実装のためのナショナルセンターを目指し、以下の指針に従い行動する。

 ・世界トップレベルのロボット実験環境、実験技術を提供し続ける

 ・国内外のロボット研究開発、運用者の交流を促進する。

 ・ロボットの安全性確保、社会実装のための仕組み作りに貢献する。

 ・ロボットに係る次世代の人材育成に貢献する。

(福島ロボットテストフィールドHP https://www.fipo.or.jp/robot/philosophy

 全施設が揃ったのは2020年3月。取材をさせていただいた建物が完成したのは2019年9月と施設は出来上がったばかり。貸し研究室利用希望者を募るべく、13枠を公募したところ、日本全国から応募があり倍率は約3倍に達した。泣く泣くお断りせざるを得なかった企業もあったが、会議室を改修するなどして、当初予定から枠を広げて合計 22社を選定した。(2021年1月の資料によると研究棟入居事業者は20社。ドローン、空飛ぶクルマ、自動走行、災害ロボット、ロボット向けシステムなど、その分野は多岐にわたる。)

 当地に施設を構える企業のメリットとして最も大きいのが、研究開発のスピードアップだ。実験フィールドがすぐ近くにあるため、実証実験を行なった後に改良を加え、またすぐに実証実験を行う事が可能。これにより、研究開発のスピードアップが圧倒的に上がるのだ。内容によっては当該施設内の認可だけで実証実験が可能だ。自治体の認可が必要なケースでも、南相馬市をはじめとする近隣自治体のバックアップ体制が整えられており、研究開発を進める企業にとって、メリットは大きい。

 仮に自治体や国の認可が必要な実証実験を行いたい企業が出てきた場合を考えてみたい。一般的に、経験が少なく不慣れな申請が来た場合、プロセスの確認からはじまり、手続きに時間を要してしまう。逆に、特定分野の申請手続きが増えれば増えるほど、自治体や担当者に知見が溜まり、結果として処理時間の短縮にも繋がる。ロボット産業に関わる行政手続きのノウハウが集約されていくことになり、入居企業はそのメリットを存分に享受できるようになる。

 フィールドが近くにあることはもちろん、申請と承認に要する時間が短縮されることで、これまで1ヶ月に1度しかできなかった実証実験を2度3度と増やすことができる。その分開発の速度もあげることができる。そうした入居企業の研究開発を裏側から支える事ができるのが、ロボット産業が集まるロボットテストフィールドの強みだ。

ロボットの社会実装のために

 当地は震災で大きな被害を受けたエリアに建設された。以前の状態に戻すのではなく、新しいものを生み出そう、といった構想から誕生した。実証実験ができるフィールドを提供しているが、基本理念にある通り、大目的は「ロボットの社会実装」だ。さらにその先には、ロボットテストフィールド周辺に関連工場が立ち並び、雇用が生まれ、人材が集まり交流が促進され、ロボット関連産業がさらに集積する、そんな未来を描いている。

 もともと福島県はロボット産業に特化していたわけではなかった。震災からの復興も考える中で、新しい産業基盤を構築したいと考えていた。製造業は存在しており、そのポテンシャルを応用できる産業でもあるロボット産業が候補に浮上した。

 日本は製造業に代表されるファクトリーロボットの分野では、国際的にも優位な位置にある。一方で、フィールドロボットに関してはまだまだこれから。ロボット産業の中でも、将来的な発展性も狙える「フィールドロボット」のためのテストフィールドが当地につくられたのには、そうした背景もある。

 福島県知事が2020年9月に同地を訪問した際には「この福島ロボットテストフィールドが大きく活性化をして、地元の企業さんを巻き込んで、大きく花開いていくことが、これから復興を前に進めていくために必要不可欠だと思います。地元の企業さんを始め、国内外の研究者の方々に、施設・機能を活用していただき、日本あるいは世界の技術レベルを上げていきたいと思います。」と語っている。

(福島県HP参照 http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/chiji/0109ugoki.html#0927

 陸・海・空すべての実証実験施設が一箇所に揃っている場所は、世界に類を見ない。海外からの問い合わせや見学も来ており、韓国や台湾の企業が関心を示している。それだけロボット開発のための環境の整った魅力的な場所なのだ。当地を通じて、日本国内におけるフィールドロボットの普及が進み、ロボットが社会実装されていく未来に貢献したい。

今回お話を聞かせていただいた

公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構の事業部長 本宮 幸治さん

取材を終えて

 百聞は一見に如かず、との言葉があるが、その言葉通り、実際に足を運んで、施設を見学させていただき、さらには担当の本宮さんからお話を伺ったことで、福島ロボットテストフィールドの魅力を深く知ることができた。日本だけでなく海外からも注目を浴び、全国各地から入居希望が殺到するほど、魅力に溢れた場所である事は、とても興味深い。

 まだはじまったばかりで、気は早いかもしれないが、ロボットテストフィールドで実証実験を行なったロボットが、社会実装される未来は手が届くところまで来ているように感じた。

 研究開発は機密事項が多く、ビジネスの根幹にも関わる。よってセキュリティ対策など、対応すべき課題も残るが、各方面の研究者が集まるメリットも大きい。入居企業間でのコラボレーションにより、オープンイノベーションが生まれる可能性も秘めており、さらには、同地での活動から、政策提言に繋がることもあるかもしれない。

 今やロボット産業は日本を代表する産業の1つ。そんなロボット研究開発の一大拠点として、日本だけでなく世界から「福島」が注目を浴びている、そんな未来にも期待したい。

福島ロボットテストフィールドHP https://www.fipo.or.jp/robot/

福島イノベーションコースト構想HP https://www.fipo.or.jp/

福島ロボットテストフィールド

住所:福島県南相馬市原町区萱浜字新赤沼83番 南相馬市復興工業団地内

電話:0244-25-2473

※事前予約をすれば、見学も可能なので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください

桂川融己トラベルライター

投稿者プロフィール

得意分野は、好奇心の高さとフットワークの軽さを活かした繋ぎ役「コネクター」。 ミャンマーでインタビュアー兼ライター兼編集やら、マーケティング支援など。 日本生命で8年弱働き、現地採用でミャンマー・ヤンゴンへ。 日系企業向け人材紹介会社業で2年間働き、その後フリーに

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