【富岡町との繋がり きっかけはボランティアツアー】

ボランティアツアーで知った富岡町の現状 藤田さんとの出会い

 今、私は富岡町の魅力を伝えるとみおかアンバサダーとして活動をしているが、ここまで富岡町に関わるようになったきっかけは、今から5年半程前の2015年10月に遡る。

その頃、私は福島県の放送局を離れ、東京でアナウンサーを続けつつも他の仕事も行っていた。それはリクルート住まいカンパニーという企業での企画営業の仕事である。何故福島のラジオ局のアナウンサーから転職したかというと、震災をきっかけに多くの東京の起業家たちが福島に入り、福島復興の為新しい事業やプロジェクトを立ち上げて0から1を生み出していく姿に興味を持ったからだ。その経験を私も一度積んでみたいと思い、2014年に多くの起業家も生み出しているリクルートに転職をしたのだった。

そのリクルートでは、通常の業務とは別にCSRを使ったボランティアツアーへの参加やボランティア休暇制度を取得することが出来た。福島を離れた後も何かしらの形で福島に関わりたいと思っていた私は入社1年目でボランティアツアーに参加し、そしてそこで出会ったメンバーたちと共に翌年以降福島のボランティアや視察ツアーを企画することとなった。

そしてはじめて企画した2015年のボランティアツアーで富岡町の藤田大さんと初めて出会った。藤田さんが代表取締役を務める株式会社鳥藤本店は、震災後いわき市に移り給食業務や富岡町の復興関連事業などを主に行っているが、震災前は富岡町を拠点に給食業務や弁当の仕出し、また東京電力福島第一、第二原子力発電所や寮の食堂など35か所の食堂、売店を行っていた。

藤田さんと初対面したこの日はボランティアツアー2日目で、前日ボランティアなどを行ったいわき市から貸し切りバスで富岡町での移動から始まった。まずは町をぐるりと回りながら、藤田さんの口から現在の町の状況が説明された。原発から10~20キロ圏内に位置する富岡町は震災後、全町避難となり、その状況はこの時もまだ続いていた。町は3つの避難指示区域に分けられていたが、一方で2017年4月の一部解除に向けて徐々に動き始めていたときでもあった。この時は津波で被害を受けたエリアの建物はまだいくつもそのままの状態ではあったが、津波の被害にあったJR常磐線富岡駅は解体され、その場所には破砕施設が建てられていた。震災後取材の為に何度か富岡町に足を運んでいた為、町の変化が少しだけ感じられた。

視察後は、藤田さんが震災前に富岡町で経営していた「お弁当のなごみ邸」へ移動。半壊と診断された建物の内部は雨漏りが発生し腐った天井が抜け落ちたり、カビが生えたりするなどしていた。避難指示区域に指定された地域の現状を改めて目にし、胸が苦しくなった。

そんな中、私たちにミッションとして任せられたのが、そのなごみ邸の業務量冷蔵庫5台と建物内の清掃だった。この年の8月に水道が通ったこともあり、やっと清掃できるようになったタイミングで、「ボランティアをしたい」という私たちの意思と一致し実施されることとなった。冷蔵庫は廃棄する予定ではあったが、食品を入れたまま捨てることは出来ないので、中を何もない綺麗な状態にして欲しいとのことだった。

その対象となった冷蔵庫は2011年3月11日から開けておらず、食品はそのまま。もちろん冷蔵庫に電源を入れたままには出来ないので、中に入っていた大量の食品たちは腐っているだろうと想像は出来た。しかし4年以上放置された食品たちがどのような状態にまであるのかは分からなかった。大変な作業になることを予想し、防護服やマスクを身につけ行われた。冷蔵庫を開けてみると食品たちはドロドロに溶けて原形を留めておらず、マスクをしていても鼻をつく強い臭いが襲ってきた。それらを全て掻き出して水で流し、ブラシで擦りながら綺麗にしていく作業を繰り返し行った。また、建物内に置いたままとなっていた弁当箱なども運び出し、汗だくになりながら4時間集中して作業を続けた。皆で力を合わせた結果、最初の状態から想像できないほど綺麗にすることが出来た。

「これは富岡町の再開に向けて始めの一歩。一緒にやってくれてありがとう。」という藤田さんの言葉に胸が熱くなった。忘れられない思い出となった。

そのような経験を共にしたからこそ、藤田さんとの交流は今も続き、また参加者メンバーとも連絡は取り続けている。

▲清掃ボランティア終了後

少しずつ進む富岡町と夜の森の桜

2017年4月、前回共に訪れたメンバーたちも含め約10人で福島へ再び視察へ。前回訪れた富岡町を含め、広野町や楢葉町、川内村、いわき市など広く足を運んだ。富岡町を訪れた際、再度町の案内を快く承諾してくれた藤田さんとの再会に皆、喜んだ。

この年の4月、富岡町は帰還困難区域を除いた避難指示区域が解除され、町には変化が生まれていた。1年半前はインフラが復旧したばかりで新しい建物はほとんどなかったが、この時にはスーパーや飲食店なども併設された複合商業施設さくらモールとみおかや気軽に立ち寄れるコンビニ・ローソンもでき、さらには移設したJR富岡駅が新しく建ち、駅前にはバスターミナルも出来ていた。2015年に訪れた際は車とすれ違っても人とすれ違うことはほとんどなかったが、買い物や食事に訪れる人々も見られ町が少しずつ進んでいる様子に驚き、嬉しくなった。

そのさくらモールとみおかの飲食エリアでは、藤田さんが経営する鳥藤本店の浜鶏ラーメンも食べることが出来る。あっさりしつつコクもしっかりある鶏がらスープが絶妙な浜鶏ラーメンを私は富岡に訪れたときは必ず食べている。また、土産・贈答用の浜鶏ラーメンはJR東日本おみやげグランプリ2019で銀賞を受賞したほど人気の商品だ。ぜひ一度味わって欲しい。

▲浜鶏ラーメン

▲筆者と藤田大さんと土産・贈答用浜鶏ラーメン

この視察で一番訪れたかったのが、富岡町の夜の森(よのもり)の桜並木である。この桜たちが咲いている時期にどうして来たくて4月に設定した経緯もあった。夜の森の桜は桜の名所として全国的にも有名であり、また富岡町民の人々にとって心の拠り所でもある。しかも帰還困難区域を除いて避難指示が解除されたことで、夜の森の桜のライトアップも行われた。

本来ならば2.2メートルに及ぶ桜並木だが避難指示がすべて解除されていない為、愛でることが出来ないエリアもあるが、それでも夜の森の桜たちは美しく咲き誇り、桜並木がつくりだすアーチは圧巻で桜のトンネルをくぐっているような気分になる。この桜たちを観るために、「また来年も来よう」という気持ちになり、また参加メンバーとも同じ気持ちを共有し合った。

▲夜の森のライトアップ

変化する富岡町 楽しいと思える町へ

その後、度々視察ツアーやとみおかアンバサダー、仕事でも富岡町を訪れているが日に日に変化は起き続けているように感じる。

昨年12月改めて町の変化を見たいと思い、再び藤田さんに富岡町を案内してもらった。

まずは、富岡第一中学校を訪ねた。富岡町には2つの小学校と2つの中学校があったが、震災後子供たちの人数の減少にも伴い、2つの小学校と2つの中学校は統合された。校舎は富岡第一中学校を使い、授業が行われていた。学校が再開される際、「開かれた学校を目指そう」との地域の声もあり、受付はもちろんあるがソトから来た私でも快く迎えられた。校舎からは賑やかな子供たちの声と、子どもたちや教師など学校関係者とすれ違うたびに、皆が「こんにちは」と挨拶をしてくれ温かい空気が漂っていた。

そんな中、廊下に飾られた一枚の大きな絵が目に入ってきた。絵の中央に大きく描かれた1本の美しく咲く桜の木、その桜の周りには子供たち、そして桜の木の奥には校舎が並んでいる。油絵で力強く、一方で優しさも感じられるこの絵は福島県外の画家によって描かれたものだ。アーティストや建築家などのクリエイティブな職種の人が校内を仕事場にしながら生徒と学校生活を共にする「プロフェッショナル・イン・スクール・プロジェクト」に参画した加茂昇さんによって描かれた作品「富岡に灯る桜」である。加茂さんは転校生として、富岡の子どもたちと共に時間を過ごし作品を完成させた。実は真ん中に描かれた桜は富岡第二小学校に植えられた桜で、奥の左の校舎は富岡第一小学校、そして右は富岡第一中学校となり、一緒に描かれている。

▲富岡町の第一小学校の桜と第二小学・第一中学校の校舎が一緒に描かれた「富岡に灯る桜」

そもそもこのプロジェクトは「子どもたちが戻ってきて良かったと思える学校にするためにはどうしたらいいか」という想いからスタートしている。この絵を通して子どもたちは何を感じただろうか。「場所が変わっても、離れていても、一緒だよ」そんな声が聞こえてくるようだった。

他にも様々なところで変化を感じた。昨年2020年3月14日に全線開通したJR常磐線夜ノ森駅。駅の隣には綺麗な待合室も出来、利用者が今後増えていくことを予感させた。

また、12月のこの時期富岡町の冬イベントとして「とみおかイルミネーション2020」も行われていた。このイベントはコンテストも共に行われ、コンテストは富岡町民や富岡の事業者・店舗がエントリーし我こそはと飾り付けたイルミネーションを披露し合う。町に賑わいをもたらそうと一般社団法人とみおかプラス主催で2017年から行われている。

この日もいくつかエントリーされているイルミネーションを観たが、それぞれに個性が溢れて、鮮やかなイルミネーションはとても綺麗だった。ちなみに今回の受賞チームは、ホッともっと・とみおかによる『笑顔が溢れる富岡町』と福島大学FUREサテライトによる『FURE FURE TOMIOKA』に決まった。こちらはSNSでも確認することができる。

▲ホッともっと・とみおか『笑顔が溢れる富岡町』

また、今回も案内してくれた藤田さんも新たな事業をスタートしていた。

それがシミュレーションゴルフ施設「ドライビングマスターズ」だ。シミュレーションゴルフとは、ゴルフコースが目の前のスクリーンに映し出され、実際に自分の打った球がセンサーに反応しスクリーン上で具現化される。まるで本当にゴルフコースを回っているかのような感覚になれる。「町の皆さんの楽しみを増やしたい」と気軽に出来るシミュレーションゴルフを富岡町でつくったという。

▲ドライビングマスターズでシミュレーションゴルフを楽しむ筆者

“楽しいと思える”イベントや施設が増えていることに、富岡町が次のステージに向かっていることを感じた。町が前に進むことに嬉しさを感じつつ、今後も変化を見逃さないように足を運びたいと思う。そして、繋がってきた縁を今後も大切にしていきたい。

記事作成:2021年2月24日

※とみおかアンバサダーについては【富岡町の魅力を発信とみおかアンバサダー】をご確認下さい

佐々木 瞳トラベルライター

投稿者プロフィール

地域のキラキラを伝えたい 日本酒ナビゲーター 福島県とみおかアンバサダー 文化放送 ・SAKIDORI レポーター 金15時半〜 ・サンデーNEWSスクランブル パーソナリティ 日17時50分〜 東京MX東京ホンマもん教室 MC 日19時〜

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