小高区で頑張る根本洸一さん

あの東日本大震災から早、十年が過ぎようとしています。

30km圏内の人々は、各地に避難しました。もちろん20km圏内の小高区の方々も暫く故郷に帰ることができませんでした。

 農業が大好きな小高区に住んでいた根本洸一さんもその中に一人でした。現在は、83歳になる根本さんも当時73歳…小高区にある自宅に近い30k m圏外の相馬市の仮設住宅に奥さまと共に身を移しました。小高区の田んぼも畑も日を追って荒れてきました。農業の大好きな根本さんには、我が子の様に愛する田畑をそのままにしておく事に悲しみを噛みしめていました。

 震災の翌年には、日中は20km圏内に入れる事になり(継続しないと再開は難しい)と相馬から1時間かけて車を走らせ毎日々通い続けました。

通い続けて草刈りから始め土壌の整備をして玉ねぎや人参や他色々な野菜を有機農法で作り始めました。しかし、最初の3年間は、全て破棄するしかなかった状況で辛い時間でした。

 そんな根本さんの一生懸命汗して田畑に通う姿を見て、周囲の人たちは、『なぜ!作るんだ?誰に頼まれて作っているんだ?』などと憶測で聞いてきました。色々な人が、一人黙々と畑で野菜や米作りをしている根本さんに疑問をぶつけてきました。しかし、誰に何を言われようと「自分は野菜作りが好きだから…米作りが好きだから勝手に自分で作っているんだ」と言い続けていました。

根本さんは、誰に何を言われようが「只々野菜を作るのが好きだから…」と応えては、寒い日も暑い日も風の強い時も毎日々、小高区にある田畑に通って鍬を持ち、汗を流しました。

根本さんの一番理解者の奥さまの幸子さんも共に車に乗って根本洸一さんを応援しました。奥さまも根本さんを信頼し笑顔で少し少し耳が遠くなった根本さんの耳替りになり、ゆっくり大きな声で相手の話すことを耳元で説明して下さいます。そんなお二人の様子が、ほのぼのと周囲に笑顔をもたらしています。

私もそんな根本さんご夫妻にお会いすると【幸せ】とは、このようなお二人の姿ではなかろうか?としみじみ思うのです。

 根本さんは、〈生態系の破壊〉を憂いています。植物が光合成で養分を創り、その植物を動物が食べる。動物が死ぬと微生物が分解し、その養分を植物が取り入れます。このように、生き物がそれぞれの役割を担当している生態系が気候の変化や人間活動により乱れが出て生き物全体に影響が出ているのです。

 根本さんは、「生態系を崩しては、いけない」と言葉を強くして皆さんにお話ししています。人間が森林を伐採したお陰で猪や猿が里に降りてきています。

 根本さんの畑にも猿や猪が出没して野菜を食べてしまう事もあるので、電気柵などを仕掛けたりして悪戦苦闘していますが、自然の摂理に従った生き方をなさっています。

 8年過ぎた畑や田んぼ…その間に家も直し、庭には、鶏小屋も作り、鶏も飼って毎朝新鮮な卵を幸子さんと食べています。野菜も少しづつですが、多品種を作り自給自足の生活をしています。市の健康診断に行くと『どこも悪いところは無いですね。百二十歳までも生きますね』と言われるとのこと。

改めて働く大切さ!食の大切さ!を根本さんのお話をお聴きして、またその元気なお姿を拝見して感じた私です。

 お金以上の財産は、「健康」です。きっとあの震災後、畑仕事もしていなければ、今の根本さんの存在は、なかったでしょう。

根本さんの玉ネギは、都会に出荷するとアッという間に売り切れます。水に晒すことなく塩で揉むことなく生でとっても美味しく食べれます。

お米も有機農法で作っているので今は、美味しく高価で売れています。

郡山市に酒蔵を構える仁井田本家さんから『昔の酒米・雄町を作りませんか』と話をもちかけられ、(酒米を作るなら山田錦)という思いもありましたが、指導員の方々の「雄町は出穂が遅いからこの辺りでは無理だろう」と言われるのを聞いて(工夫すれば何とかなるんじゃないか)と考え雄町作りに挑戦しました。粒も大きく量も少ししか取れないそうですが、穫れた雄町は、全量を仁井田本家さんへ納入して「おだやか 純米吟醸 雄町」というラベルで販売されます。

≪完全無農薬・完全有機栽培米≫すっきりした爽やかな甘みのあるお酒です。

販売したらアッという間に完売です。私も2年超しで手に入れる事ができた貴重なお酒です。苦労をこの笑顔で乗り越えた根本洸一さんの顔は、満足感で輝いていました。

「次は、若い世代の方と一緒に仕事をしながら、自分の作物の知識や知恵を伝承していきたい」とニコニコとお話する根本洸一さんです。きっと良き若者が根本さんの跡を継いで下さると楽しみにしているところです。

村田純子地元記者

投稿者プロフィール

NPO法人ほっと悠」理事長。南相馬市出身。 学生結婚で、札幌~大阪~仙台と転勤していましたが、平成12年 父の他界を機に、母を看る為に南相馬市市へ戻ってきました。 日本の旅&世界の旅もやり終え、今は「学び」の旅へ~ ジャズダンス&水泳で体を動かし、朝2時からデスクワークの日々~  皆さんに、この浜通りの素晴らしい人物&素敵な名所をご紹介していきたいと思っております。

関連記事

2021年5月
« 4月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  
ページ上部へ戻る