川内村のくらし 其の2

 

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所属している会の一つに「川内村食生活改善推進協議会」という長ったらしい名称の会があって通常は「食改」で通っています。この会は全国に組織されていて、各県・各市町村にあります。勿論、組織されていない市町村もありますが、30年余り前に誘われて入会した時には、村の委嘱という形でしたが、世の中の流れで現在はボランティアとして活動しています。

川内村は居住区が1~8区まであるので、少なくとも各区に推進員1名欲しいのですが、今のところ6名です。決まった時数の講習を受けなければ推進員になれないという規定があるので、その点が人数が増えない原因の一つになっているのかなと思います。様々な会の会員の高齢化と後継者不足の問題は過疎地域にはつきものの悩みですね。

肝心の活動は行政からの依頼が多いのですが、秋の総合健診時に減塩味噌汁を試飲してもらったり、児童の夏休みに合わせて調理実習の手伝いをしたり、園庭で収穫した野菜を使って保育園児の夏のカレー作りや、秋はけんちん汁作りの手伝い。男性の料理教室もこれまた手伝い。毎年6月19日の「食育の日」には周知事業として人の出入りが多い村内唯一のコンビニYO―TASHIさん入口でパンフレットの配布等々。年間活動が原稿用紙半分で終わってしまうのは少々残念ですね。

メインの自主活動には味噌作りがあります。村内の観光拠点の一ついわなの郷に体験交流館という体験型施設があり、そば打ち体験や味噌作り体験が出来るようになっています。

この施設が出来たので、食改の活動で味噌を作ることになったのが平成17年。味噌作りは初めてのことだったので、役場の担当課の職員の指導のもと、麹作りから4日間をかけて作りました。この4日間は納豆が食べられません。麹菌が強力な納豆菌にやられてしまうと味噌にならないのです。作った味噌はすぐに食べられる訳ではなく、塩の量や麹と大豆の割合などで変わりますが、半年くらいの熟成期間が必要になります。

初めて自分で作った味噌の美味しさは衝撃的でした。決して大袈裟ではありません。以後ずっと作り続けているのですから。

味噌作りは体験として一回で終わる予定でしたが、会員から続けましょうという提案があり、結局作り続けて15年。今では「味噌作りサポート事業」として年に一度、村の広報で参加者を募集しながら続いています。今年は新型コロナウィルス感染予防のため、一度延期をしてから、中止にせざるを得ませんでした。

大豆1斗(15㎏)米1斗(15㎏)食塩5㎏から約50㎏の味噌が出来ます。味噌汁一杯に10gの味噌を使用するとして5人家族で朝夕2回味噌汁を飲めば単純計算で500日分です。添加物一切無しで安心、安全、その上美味しいときたら言う事無しです。

味噌作りから広がった私個人の活動として、大豆作りがあります。畑も持っていないのに大豆を作ろうと思い立ち、親戚から畑を借りてしまいました。作ってみたら大豆というものは、手がかからずとても作り易い農作物で、ものぐさの私に合っていたようです。

数年前には、いつまでも元気で健やかな暮らしを目指すというコンセプトの下、婦人会と地区の老人クラブが一緒に「お達者畑プロジュクト」と称して枝豆作りをしました。皆でワイワイと種まきから収穫まで行い、収穫したての枝豆を茹でて、たらふく食べて、おしゃべりをして楽しい活動でした。機会があればまた実施したいと思っています。

写真はお達者畑での枝豆刈り取り後、集会所前で枝から鞘をむしって
いるところです。
この後、茹でて皆で頂きました。

6月に種をまいて、9月に枝豆になり、11月には大豆として収穫出来ます。が、刈り取って、干して、選別してと、大豆にするまでの始末がとても大変なので、枝豆の時期にせっせと食べます。何しろ枝豆として食べられるのはせいぜい2週間くらいしかありません。手作り味噌同様、作った枝豆の美味しさは最高ですよ。食べ始まったら止まりません。

4年前には、やはり借りた田んぼで念願の米も育ててみましたが、ほぼ手作業で、農薬は使用せずに雑草取りに大変苦労しながら、何とか収穫することが出来ました。昔のお百姓さんの苦労を嫌というほど思い知った体験になりました。米作りは一回きりでさっさと

卒業しましたが、何事もやってみなければ分からないものですね。

手作りと言えば、2011年3月の大震災・原発事故以前に、大熊町のIさんから箒作りを教わりました。ほうき草から作る箒ではなく、材料はホーキモロコシという植物です。種から育ててそれを持参して教わるのです。そんじょそこらに無い材料を持参して作り方を習うなんて中々ハードルが高い。6月に種を蒔いて秋口に収穫しました。以来、ホーキモロコシを隔年くらいで育ててはいるのですが、一回教わっただけなので、今、作ろうとしても上手に出来るか全く自信がありません。以前作った箒を解体して研究するしかないと思っています。いずれにしても手作り出来そうなものにチャレンジして何とか形にするということは、暮らしの一部分を自分の手で作り上げている実感があるというか、気持ちがウキウキして面白いものです。山羊を飼いたいと思ったこともありました。実現するまでの計画性は全然ありませんでしたが、田舎暮らしだからこそ可能性があることは数多くあると思います。更に言えば、年を取ったことで気持ちと生活時間にゆとりが出て来たと感じています。

川内村は浜通りとなっていますが、四方を山に囲まれているので海のものはありません。が、山には山菜・きのこ、里には木の実、川にはイワナ・ヤマメにウグイ。原発事故後はバッサリとそれ等から断ち切られてしまいました。山と川のものは10年経っても中々放射線量は下がらない現状にありますが、嬉しいことに里の木の実は安心して食べられるようになりました。手作り好きの私にとって、桑の実、ゆすら梅、カリン、梅、柚子、みかんの皮、苺などはすべてジャムになり、毎朝食べるヨーグルトのお供です。

ジャムは砂糖で煮るだけのお手軽なものですが、興味があっても奥が深そうで手が出せないでいるのが伝統の漬物です。

村の漬物研究会ではベテランの方達が季節のものを上手に加工してあれこれ市場やかわうちの湯などで販売しています。川内の伝統料理として漬物は欠かすことが出来ないものなので、次につなげる為にも教えてくれる先輩がいる内にきちんと教わらなければならないという思いがあります。お金で何でも買えるような世の中だけど、手間暇かけて作ることも大切ですよね。

k-labo

投稿者プロフィール

川内村の資源を活かし、交流を促進する事により、川内村の新たな魅力を創出し、新たな村づくりを進めていくための支援や仕組みづくりを行っていきます。

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