福島県南相馬市小高区 小高パイオニアヴィレッジと「アトリエIriser」

 常磐線小高駅から10分ほど歩いた場所に、まるで、子供の頃に夢見たような秘密基地を思わせる外観「小高パイオニアヴィレッジ(以下OPV)」の中に、ハンドメイドガラスブランド「アトリエIriser」があります。

 私が秘密基地と表現したのは、見た目の部分に収まりません。この中では、「地域の100の課題を100のビジネスへ」という理念を掲げる代表の和田智行さんを筆頭に、震災・原子力災害をきっかけに南相馬市小高区に訪れるようになった人たちが、地域の課題を掘り出しビジネス創造につなげ、かつ自分がやりたいことを叶えるために集う場所という機能を持っているからです。(詳しくは小高パイオニアヴィレッジのHPをご覧ください)

 一般向けにもコワーキングスペースとして使えるので、私もふらりと行くのですが、いつも新しい人たちが集い、何やら熱く語り合い、人と人が繋がりことでコトが起きていく様を見ると、子供のころ、ワクワクと友人と秘密の場所で語りあった感覚を思いだしたりします。

 さて、そうした空間の一角に「Iriser」の工房があります。職人の皆さんがサングラスをかけ、バーナーの上で作品をくるくるとまわす風景に目を奪われます。

 ディズニーランドのシンデレラ城にあるガラス細工を作っていく過程に心を奪られた、小学生時代の思いでが、私の中では蘇ってきました。

・Iriserの前身

 この「Iriser」さんを支えている職員さんのバックグランドについてお話させてください。工房がOPVの中にあるのには理由があります。OPVの前身となった小高ワーカーズベース時代に、代表を務める和田智之君はこんなことを私に語ったことがあります「地域の女性が活き活きと働ける環境をこの町に作りたいんだ!」。この言葉を聞いたのは、この小高区が原子力災害で避難区域となり、まだ避難解除になったばかりのころでした。

 そこからほどなくして、ワーカーズベースの中でガラス細工を作る地域の女性の姿が生まれました。「Hario」との連携により、Harioの商品をこの小高区で作るというプロジェクト「Harioランプワークファクトリー小高」が生まれました。

 小高を訪ねる度に、その過程を見てきました。扱う商品はガラス細工です、簡単にはいきません。今ではIriseの職人と呼ばれる人たちは、地域で普通に暮らしていた人たち、毎日、あめ色に変わり制御の難しいガラスと向き合い続けていました。

(体験教室での筆者風景)

 工房では予約制ですが、職人の皆さんが歩んだ経験を疑似体験できる教室があります。筆者自身も体験させていただきました。見ると作るのは大違い。悪戦苦闘しながらも、丁寧に教えて頂きながら、自分の手で出来上がった作品はすごく綺麗でした。きっと職人の皆さんも最初のステップはこんな感覚で今に至ったのだろうな・・などと思いながら。

・小高発のブランド「アトリエIriser」へ

 HARIOランプファクトリーで職人として働く女性の皆さんは、2019年自らのブランドを立ち上げることになります。それが「アトリエIriser」です。HARIOで培われた技術で、地域としてのブランド立ち上げまでになりました。

 職人の皆さんの作業風景を眺めながら、作られた作品を購入することもできます。作品の向こう側が知れる、そんな意味でも面白い場所になっています。

 もちろん、遠く、訪れることが難しい皆さんに向けてネットショッピングが出来るWebがあります。ご興味を持ってくださった方は是非そちらをご覧いただけたらと思います。

 私はここで、作品の元になるガラス棒に、様々な思いが吹き込まれていくといった感覚を眺めるのが大好きです。

 あめ色に変わり、ひと時も形を保つことなく、ゆらゆらとガラス玉は動きます。それを熟練の技が望む姿に変えていくわけです。

 出来上がった作品は美しく、その輝きの向こうには職人の方の思いが詰まっているように思えてなりません。またその思いが、誰かを飾ることにもつながっていき、幸せな時間をひっそりと支えていくのですから。

吉川彰浩地元記者

投稿者プロフィール

高校卒業後、福島県浜通りに移り住み、気が付けば20年が過ぎました。10代の頃の「何もない田舎だなぁ」という思いは、暮らしの中で「面白いことがいっぱいあるじゃない!」と変わっていきました。他地域の方々に、そういった暮らしの視点での魅力をお伝えしていきたいと思います。

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