地元民に愛されるカフェ『Odaka Micro Stand Bar ~オムスビ~』そこはかとない人気の秘密
今回、福島に来た一番の目的は『Odaka Micro Stand Bar ~オムスビ~』への訪問です。
通称『オムスビ』と呼ばれ、親しまれているこのカフェ(バーではなくカフェ)は私の大学時代の友人である森山 貴士(もりやま たかし)さんが経営しています。
たっぷり陽射しの入る、明るく和やかな空気感が充満した店内。踏み入れた瞬間からほっと安心するような居心地の良さを感じます。もしかしたら入り口で靴を脱ぐことが影響しているのかもしれません。
お店は平日の昼間でも老若男女問わずたくさんの方でにぎわっています。
満席でテイクアウトする人の姿もちらほら。
縁もゆかりもなかった土地で、一体どうやって森山くんはこんな素敵なお店を出すことができたんでしょうか?
約1週間オムスビに通って、少しずつその理由が分かってきました。
この記事ではオムスビのそこはかとない人気の秘密と、そのオーナーである森山 貴士さん(以下「森山くん」と呼ばせて下さい)をご紹介します!
■ オムスビは売っていないカフェ『オムスビ』の由来
オムスビの由来は『Odaka Micro Stand Bar』の頭文字“OMSB”から。
森山くんは4年前、小高の地の地域活性化のために第一歩を踏み出します。
大きなチャレンジをするために、まずは小さな検証が必要。「マイクロスタート」で何かできることを模索し、キッチンカーでコーヒーの販売を始めました。
『Odaka Micro Start』にBを付けると『オムスビ』になるゴロが気に入り、後ろにBarを付け、意味が通じるようにStartをStandに変えたそうな。
このキッチンカーが、今ではたくさんの人に愛される人気店の原点です。
■ 森山くんがこの地に辿り着いた経緯
学生時代から頭が良く真面目だった彼は、大学卒業後、東京都内のIT企業へエンジニアとしてバリバリ働いていました。
入社した会社は、数年で従業員が5倍に増える急成長の真っ最中。
優秀な人材が次々と入社してくるのに対して、じっくりと「人を育てる」環境が整っていないことに問題意識を感じていたそうです。
仕事の楽しさを感じられるようになる前に辞めてしまう後輩もいて、どうにかしたいけれど自分自身も仕事が忙しく一人一人と向き合う余裕がありません。
もっとじっくり「人を育てる」「人に育てられる」という関わりの中に身を置きたいと考えるようになりました。
希望や意欲を持って仕事に臨んでいる人が、自分の置かれた環境でそれを諦めたり挫折したりすることをなくしたい。「やりたいことを実現したい」と「こんなはずじゃなかった」という思いのギャップを埋めたい。
そんな想いから退職を決意しました。
その後の進路を模索した結果「“人間同士の繋がり”や“人材育成”に重点を置きたいなら、都会よりは地方へ行こう」と思い立ち、縁あって福島県南相馬市へやってきます。
実は別の候補地もあったそうですが「東日本大震災の復興支援は今しかできない!」と考え、南相馬市の中でもまだ立ち入り禁止区域のあった小高区を選びました。
■ オムスビの看板メニューはコーヒーとサンドイッチ
JR小高駅の改札を背に、そのまま真っすぐ進んで徒歩3分のところにオムスビはあります。
お店の隣には駐車場もあり、車での来店もスムーズです。
こだわり抜いたコーヒーと、サンドイッチが売りのカフェ。決して「おむすび」は売っていません。
コーヒーは豆の種類が豊富。注文してからその場で一杯一杯、丁寧にハンドドリップして入れてくれます。
ブラックはもちろん、ふわっふわのアートが可愛いカフェラテもおすすめ。
サンドイッチは間に挟む具材が美味しいのはもちろんのこと、パリッと焼き上げたパンとの相性もばっちりです。遅い時間には売り切れてしまうことも。
この地域には美味しいサンドイッチが食べられるお店が今までありませんでした。
「ここになかった、けどきっとみんなが『ほしい』と思っているものを実装してみる」がオムスビの根底にある考え方です。
陽射しが気持ちの良いカフェの一角で、コーヒーとサンドイッチをいただくのはまさに至福の時…!
私は南相馬滞在中、オムスビのコーヒーとサンドイッチを毎日ブランチにしたかったのに、お店の営業日・営業時間はちょっと限られています。
「もっと食べたいのに!」と苦情を伝えたところ、ちょっと申し訳なさそうに「カフェオーナーとエンジニア、二足の草鞋を履いているもので…」と彼は言うのでした。
■ あなどることなかれ ただのカフェに留まらないオムスビの魅力
そう、カフェオムスビは普通のカフェとしてだけではなく、ワークショップが開催されたり、仕事をする人にワークスペースとして貸し出されたりしています。
シニア向けのパソコン教室や、小学生向けのプログラミング教室も定期的に開催されています。
息子をプログラミング教室に通わせているお母さんは「本当に何の取り柄もない子だったのに、森山さんのお陰でプログラミングにはまっていて!去年の誕生日プレゼントはゲーミングソフトが使えるパソコンなんですよ。なかなかいないでしょ、そんな小学生…!」と嬉しそうに話を聞かせてくれました。
森山くん自身はエンジニアなので、Web制作やシステム開発の仕事をして生計を立てています。
ですが、彼がしたいのは「自分が稼ぐ」ことではなく「人を稼げるように育てあげる」こと。
例えば、カフェスペースの貸し出しもしたいそうです。
「カフェ経営に興味のある会社員が、週末だけカフェを開いて、収入を得られる見通しが立ったら会社員を辞めて独立できるまで寄り添いたい」と森山くんは話してくれました。
なんと。彼の履いている草鞋は2足どころか4、5足…。もはや「なんでも屋さん」という言葉がぴったり。
「困ったらまずオムスビへ行ってみよう!」というくらい小高の方から信頼されている森山くんなのでした。
■ 人と人を結ぶ場 オムスビ
私のFacebookのタイムラインに森山くんの情報は時々流れてきていたし、彼の活動内容は何となく把握していました。
お酒を飲みながら事業に懸ける想いを話してくれたこともあったし、その熱意や情熱も理解していたつもりでした。
でも今回『Odaka Micro Stand Bar ~オムスビ~』を訪れ、オムスビや森山くんの仕事について、私はこれっぽっちも知らなかったことに気付きました。
森山くんは「誰とでも平等に向き合う」ことができる人です。
年上に対して尻込みしない、年下に対して偉ぶらない、肩書がある人に対して畏縮しない。男性に対しても女性に対しても、常にニュートラルで一定の対応をします。
まだ幼い私の娘に対してさえ、平等の扱いです。
森山くんが私と娘を連れて『東日本大震災・原子力災害 伝承館』(リンク:「東日本大震災・原子力災害伝承館とJR双葉駅近辺を訪ねて想うこと」)を案内してくれた際、彼は娘の質問に対してびっくりするくらい分かりやすく説明してくれました。
原子力発電所のジオラマの前で、地震のこと、津波のこと、原子力発電のことをおそらく30分以上もかけてじっくりと。
果たして4歳児がどこまで理解したのかは分かりませんが、このことがきっかけで娘は森山くんの虜になります。
尊重されていることは、子供にもきちんと伝わるのです。
森山くんは決して表情豊かな方ではないし、子供のテンションに合わせるタイプではないけれど「子ども扱いしないで自分を一人前として認めてくれる大人」と娘に認識されたのでしょう。
今回の滞在中、森山くんにたくさんの素敵な方をご紹介していただきましたが、彼の接し方は誰に対しても平等で丁寧。
森山くんは他人をジャッジ(評価)しないのです。
私は森山くんと同じ大学に通いながらも、まるで正反対な学生生活を過ごしていました。
教室前方で森山くんが真面目に講義を聴いたり質問したりしているのに対して、私は一番後ろの席でうたた寝したり携帯電話をいじったりしているような学生でした。
そんな我ながらちゃらんぽらんだった私のことすらも、彼はきちんと尊重してくれるのです。
特に「こんなことを仕事にしたい」とか「あんな活動を始めたい」という時はことさら熱心に話を聴き、まるで自分のことのように真剣になってアイディアを出してくれます。
大学を卒業してから十数年後、私たちが福島で再会できたのも、ひとえに森山くんのそのスタンスのお陰です。
意識的なのか、無意識なのかは分かりませんが、いつも相手のありのままを受け入れられるのが彼の最大の魅力ではないでしょうか。
小高の町を森山くんと一緒に歩いていると、あちらこちらで声をかけられます。
食卓にはご近所さんたちからのおすそわけがたくさん並ぶし、定食屋さんでは連れ添いの私の分まで大盛りサービスしてくれます!
東日本大震災の後、復興支援のために福島を訪れ、人と人とを「結び」その人の成長や町興しに貢献してきた森山くん。
彼その人柄と約6年間の奮闘の結果が、今のオムスビの最高の居心地の良さの理由なのでしょう。
小高に足を運ぶ際は、ぜひ!オムスビに立ち寄るのをお忘れなく!
■ Odaka Micro Stand Bar ~オムスビ~ について詳しく知りたい!
▼所在地
住所:〒979-2121 福島県南相馬市小高区東町1-67
電話:0244-32-0914
▼営業時間
火、木 11:00 – 19:00
水 13:30 – 18:00
土 11:00 – 17:00
コーヒーワークショップも随時開催していますので、ぜひご参加ください。現在はfacebookでの告知が中心ですので、そちらをフォローくださいませ。
▼Facebookページ
https://www.facebook.com/odakao.msb/
▼オーナー 森山貴士さんより
「お店とお客様」の関係ではなく「一緒にまちを豊かにしていく仲間」づくりがしたいと思って動いてきました。おかげさまでそうした仲間が本当にたくさん増えました。引き続き応援よろしくお願いします!